不動産を相続する際にどのような流れで進むのかをご存じでしょうか?不動産の相続には手続きや申請など混乱するポイントも多いので、基礎知識をしっかりおさえておきましょう。
今回は、不動産の相続税の計算方法や申請までの流れをご説明していきます。
相続税とは?
相続税とは、親や祖父母などが亡くなった際に、財産を相続する人に課せられる税金です。すべての方に課税されるのではなく、ある一定額を越えた財産を相続する場合に対象となります。
相続の手続きの流れとは?
被相続人が亡くなった際には、葬儀の手配や預貯金の手続きだけでなく、不動産などの財産の遺産分割など、多くの手続きが必要になります。いざという時に混乱してしまわぬよう、相続全体の流れをおさえておきましょう。
①法定相続人の確認
遺言書がない場合は、原則として法定相続人全員が協議して遺産分割の方法を決定する必要があります。まずは「法定相続人にあたるのは誰か、何人なのか」をできるだけ速やかに確認しなくてはいけません。
相続人を調査する方法は、被相続人の出生から死亡まですべての戸籍謄本を取得し、相続人の候補を確定させていくのが一般的です。
②遺言書の確認
亡くなった方が遺言書を残していた場合には、その内容に従って手続きを行っていきます。遺言書は基本的に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、それぞれ手続きが異なるので注意しましょう。
③遺産と債務の確認
相続する財産を把握しておくことも大切です。相続財産には土地や建物のような不動産だけでなく、貴金属、預貯金、株式などの有価証券等多岐にわたります。
一方で、マイナスの負債についても把握しなければいけません。借入金や未払金等も洗い出しておきましょう。
④遺産の分割
相続する財産と、法定相続人が決まったら、どのように相続するのかを話し合います。分割がスムーズに話し合えるとは限らないので、意見がまとまらず協議が長期化することも珍しくありません。
分割する協議に期限はないものの、長期化すると新たなトラブルが増えたり、相続人が増減してしまうなどのリスクがあります。できるだけ早めの解決が望ましいでしょう。
⑤申告と納税
相続税の申告は、被相続人が死亡(したことを知った日の翌日)から10ヶ月以内に行うことになっています。
納税の期限も申告の期限と同じです。
控除制度などを利用し課税対象になるケースはそう多くないものの、遺産の分割協議がまとまるかどうかに関わらず、相続税の申告・納付は必要であるため、事前に課税対象になるかどうかを把握しておくのがおすすめです。
相続税がかかる財産には何がある?
相続税が関係する財産には大きく分けて「プラスの財産」と「マイナスの財産」に分けられます。
<プラスの財産>
不動産に関するもの |
土地(宅地、田畑、山林など) 建物(住宅、店舗など) 権利(借地権など) |
金融に関するもの |
現金、小切手、預貯金、株式、国債、有価証券など |
その他 |
ゴルフ会員権、著作権 |
動産 |
車、骨董品、宝石 |
<マイナスの財産>
借金 |
借入金、未払金、手形債務など |
遺産総額から差し引くことができる債務とは?
プラスの財産から債務(マイナスの財産)や葬式費用は差し引くことができます。
債務控除によって支払う税金に大きな差が発生する場合もあるので、しっかりと把握しておきたいところです。被相続人が亡くなったばかりの時期は、さまざまな手続きに追われて多忙になります。特に葬儀費用は、ばたばたした最中の出費であるため、重要書類や領収書などの紛失に注意してください。
基礎控除額は差し引かれる
相続税を計算する上で、ある一定の金額まで控除できる「基礎控除」というものがあります。法定相続人の数によって基礎控除額は異なりますが、決まった計算式があるため、誰でも予測可能です。
基礎控除額についての詳細は、後ほどご説明します。
また、お通夜やお葬式などの葬儀費用も遺産総額から控除することができます。戒名料やお布施、葬儀を手伝ってくれた方へのお心付は控除できますが、香典返しや墓石の購入費、四十九日などの法事にかかる費用は対象外です。
該当する出費に関しては、領収書などをしっかり残しておきましょう。 >>プロフィールはこちら
相続税の計算方法は?
相続した財産の金額が基礎控除額を超えた場合は、課税される遺産の総額に対して相続税が掛かります。計算方法をおさらいしましょう。
出典:みずほ証券
課税遺産総額を計算する
まずは課税される遺産総額から基礎控除を差し引きます。基礎控除額の計算方法は次のとおり。
基礎控除額 = 3,000万円 + ( 600万円 × 法定相続人の数 )
課税価格の総額から、基礎控除額を差し引いた金額が課税遺産総額となります。
相続税の総額
上記で決定した課税遺産総額から、相続人全員で納める仮の相続税を計算します。相続人の数や構成によって、その配分は異なります。
<例>
配偶者と子ども=配偶者1/2、子ども½
配偶者と両親=配偶者2/3、両親⅓
配偶者と兄弟姉妹=配偶者3/4、兄弟姉妹¼
法定相続分に応じて、それぞれの割合を乗じた後の金額に対して税率をかけて合計します。
相続税額・計算例
具体例を用いてイメージしてみましょう。
<夫婦と子ども2人の4人家族で、夫が亡くなった場合>遺産総額1億5,000万円
①課税遺産総額を決定する
相続財産1億5,000万円 − 基礎控除額4,800万円 = 課税遺産総額1億200万円
②法定相続分で分ける
妻 1億200万円 × 1/2 = 5,100万円
子1 1億200万円 × 1/4 = 2,550万円
子2 1億200万円 × 1/4 = 2,550万円
③各人の相続分に税率をかけ、相続税額を決定する。
※税率と控除額は参考資料(出典:みずほ証券)を参照
妻 5,100万円 × 30% − 700万円 = 830万円
子1 2,500万円 × 15% − 50万円 = 325万円
子2 2,500万円 × 15% − 50万円 = 325万円
相続税額は 830万円 + 325万円 + 325万円 = 1,480万円
④実際の相続分から、各人の相続税を算出する。
※実際の相続分=妻 8,000万円、子はそれぞれ3,500万円だった場合
妻 1,400万円 × 8000万円 ÷ 1億5,000万円 = 約746万円
子1 1400万円 × 3500万円 ÷ 1億5,000万円 = 約326万円
子2 1400万円 × 3500万円 ÷ 1億5,000万円 = 約326万円
上記のうち、配偶者には税額軽減の措置制度があるため、妻の納付額は0円になります。
受取人によっては相続税額が2割加算される場合がある(計算例付き)
法定相続人は原則として血縁親族になる場合がほとんどですが、まれに近しい親族以外が相続人になる場合があります。
・兄弟姉妹(2親等血族)
・甥、姪(兄弟や姉妹の子、3親等血族)
・内縁の夫や妻
・孫養子
上記の方が相続する場合は、相続税が2割加算されますのでよくご確認ください。
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相続税評価額とは?
相続税評価額とは「相続する財産の価値(評価額)」のことです。相続税の有無を判断するためには、相続する財産にどのくらいの価値があるのかを把握する必要があります。
財産には、現金や預貯金をはじめ、土地や家屋、株式など多くの種類に分けられますが、それぞれ評価方法が異なります。
ここでは、土地と建物の評価方法をご紹介します。
土地評価額の計算方法
土地は1つひとつの大きさや条件が異なり、評価するのが難しい財産であるといわれています。具体的に、評価方法は2つあり、算出するためのルールもやや複雑です。
①路線価方式:路線価(道路に面する土地1㎡あたりの評価額)が定められている地域の評価方法です。路線価は、国税庁のホームページに公表されています。
<計算方法>路線価 × 補正率 × 土地面積
土地ごとに定められている路線価に、宅地の使いやすさを考慮した補正率、土地の面積をかけて算出します。
②倍率方式:路線価が定められていない、道路に面していない土地等の評価を行う際に用いる方法です。
<計算方法>固定資産税評価額 × 倍率
固定試案税評価額は毎年春ごろに送られてくる納税通知書に同封している「固定資産税課税明細書」に記載されています。また、倍率は路線価と同じく国税庁のホームページで公表されています。
建物評価額の計算方法
建物の評価方法はとても単純です。
<計算方法>固定資産税評価額 × 1.0
建物の固定資産税評価額をそのまま財産の評価額に合算できます。
相続税控除の制度もある?
相続税控除は「未成年者控除」と「障害者控除」の2つがあります。
以下から詳しく解説します。
未成年を対象とした制度
法定相続人が未成年の場合は「未成年者控除」が適用されます。相続時点での年齢(満年齢)でカウントされ、20歳になるまでの年数×10万円が控除額です。
例:15歳5ヶ月の子どもが相続する場合
<計算式>(20−15)× 10万円 = 50万円
障がい者を対象とした制度
「障がい者控除」は日本国内に住所のある85歳未満の障がい者が受けられる控除です。85歳になるまでの年数につき10万円(特別障害者の場合は1年につき20万円)が控除されます。
例:30歳の方が相続する場合(一般障がい者)
<計算式>( 85 − 30 )× 10 = 550万円
未成年者控除と障がい者控除は、その方の控除額が相続する財産の金額より大きい場合、扶養義務者にあたる他の相続人からも控除できます。
相続登記に必要な費用は?
土地や建物などの不動産を相続した際には、法務局で管理している登記簿へと登録します。普段の生活で「登記」はあまり馴染みがないものですが、相続登記をしておくとトラブルが起きた際に第3者に自分の財産を主張でき、社会的に信用を得られやすくなるというメリットがあります。
相続登記には、必ずかかる費用の他に司法書士に依頼する場合の費用がありますので、おおよその目安をイメージしておきましょう。
登録免許税がかかる
登記を申請する際にかかる税金が「登録免許税」です。税額は、申請する不動産の固定資産税評価額によって異なります。
登録免許税 = 固定資産税評価額 × 0.4%
土地と建物の固定資産税評価額が1000万円なら4万円かかります。固定資産評価額は、各市町村から送付される課税明細書に記載されているので、あらかじめ支払う金額を知ることが可能です。
必要資料を揃える費用
相続登記に必要な書類は、相続の仕方によって種類が異なります。不動産に関する所定の申請書のほかに、被相続人と相続人に関する書類の提出が必要です。一つひとつは大きい金額ではありませんが、相続人の人数や内容によっては、それぞれ何通も必要になることもあります。
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(改製原戸籍謄本) |
1通 750円 |
被相続人の除籍謄本 |
1通 750円 |
相続人全員の戸籍謄本 |
1通 300円 |
・不動産を相続する相続人の住民票の写し ・被相続人の住民票除票の写し |
1通 200円~300円程度 ※自治体によって金額は異なる。 |
印鑑証明書 |
1通 200円~300円程度 ※自治体によって金額は異なる。 |
固定資産額評価証明書 |
1通 200円~400円程度 ※自治体によって金額は異なる。 |
報酬額は各司法書士が自由に設定することができます。各種書類の作成や取り寄せまでをおこなうケースでは、一般的に5〜15万程度の報酬額です。各地域や依頼する事務所、相続登記のみを依頼する場合などで相場が異なりますので、いくつかの事務所へ相談してみましょう。 >>プロフィールはこちら
相続登記しないとどうなる?
2021年4月に成立した法改正により、相続登記は義務化され、公布から3年後の2024年までに運用が始まります。運用後は、被相続人の財産の中に不動産があると分かった日から3年以内に、相続人は登記を行わなければなりません。
正当な理由なく登記を怠った場合には、10万円以下の過料を支払うことになります。詳細はまだ公表されていませんが、今後は早めの相続登記が必要となるでしょう。
スムーズな相続手続きを
相続する財産の金額がある一定額を超えた場合には、相続税の申告が必要です。
身内が亡くなったときには、さまざまな手続きに追われるものですが、重要な書類や領収書などはしっかり保管し、忘れずに申告しましょう。
申告期限は亡くなった日(相続があると知った日の翌日)から10ヶ月後です。相続を放棄する場合には3ヶ月以内に申し出る必要がありますので、よくご検討ください。
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