中古物件の購入を検討している方であれば「耐震基準適合証明書」という言葉を聞くことがあると思います。
耐震基準に関するものだとなんとなくわかっていても、内容についてまでは知らない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、耐震基準適合証明書の取得方法と費用、取得にあたっての注意点まで幅広く解説します。
耐震基準適合証明書とは?
耐震基準適合証明書とは、建物が建築基準法に定める耐震基準を満たしていることを示す書類です。
耐震性に安心感が得られる以外にも、住宅ローンの控除や住宅を購入する際にかかる税金の優遇措置を受けられます。
しかし、耐震基準を満たしている建物だからといって、自動的に発行されるわけではありません。事前に取得方法や取得するタイミング、注意点などを把握しておくことが大切です。
耐震基準適合証明書はどうやって取得する?
耐震基準適合証明書を取得するためには、いくつかある項目を理解しておかなければなりません。
ここでは、以下についてご紹介します。
・発行までの流れ
・必要な書類
・どこでもらえるのか
・誰が申請するのか
・取得までの期間はどのくらいか
・費用について
それぞれについて詳しくみていきましょう。
発行までの流れ
発行までの流れは、以下の通りです。
1.建築士や検査機関に事前相談
2.耐震依頼
3.現地調査・耐震診断の実施
4.耐震診断の適否の確認
5.耐震基準適合証明書を発行
申請先の担当者が次項で紹介する書類をもとに、対象物件の現地調査と耐震診断を行います。その後、耐震基準に準じている物件であると認められた場合のみ、適合証明書の取得が可能です。
しかし、依頼先の進め方や物件の状態によっては、発行までの流れが変わるケースもあります。
必要な書類は5つ
申請に必要な書類は、以下のとおりです。
・物件状況等報告書
・間取り図
・建物登記事項証明書の写し
・耐震基準適合証明仮申請書
・検査済証
物件状況等報告書と間取り図に関しては、売主や不動産会社から取得。建物登記事項証明書は、法務省のホームページから書類申請が可能です。
そして、耐震基準適合証明仮申請書は、国土交通省のホームページからダウンロードができます。記入例も記されているので、併せて確認しておきましょう。
このなかでも検査済証に関しては、築年数が経過している物件では見つからないケースが多いようです。検査済証がない場合の対応方法については、後述します。
どこでもらえる?
耐震基準適合証明書を発行できるのは、以下の機関です。
・建築士事務所に所属する一級建築士
・指定確認検査機関
・登録住宅性能評価機関
・住宅瑕疵担保責任保険法人
発行先に迷う場合は、どこでもらえるか物件を所有する不動産会社に相談してみましょう。
申請者は「売主」が一般的
耐震基準適合証明書は、「売主」が申請を行うのが一般的です。
しかしながら、耐震基準適合証明書から得られるメリットを考慮すると、買い主が申請するという考えも間違いではありません。また、申請に非協力的な売主がいるのも実情です。
そのため、売主による耐震基準適合証明書の手続きがなかった場合は、買い主が申請者となり「引き渡し前」に手続きを行いましょう。
ここで大切なのは、申請のタイミングは「引き渡し前に行う」ということ。とても重要なことですので、詳細は後述します。
期間は約1〜3ヶ月
申請してから発行されるまでの期間は、約1〜3か月程度かかります。
具体的な期間としては、以下のとおりです。
・依頼後に現地調査が行われるまで:1週間程度
・耐震診断から結果報告:1か月程度
依頼する検査機関や建物の状況にもよりますが、上記の期間かかることは考慮しましょう。
また、耐震工事が必要と判断された場合、さらに1~3か月ほど時間を要してしまいます。
費用はどのくらいかかる?安い?相場は?
耐震基準適合証明書にかかる費用は、証明書の発行に5万円程度、耐震診断に10万円程度が相場です。
しかし具体的な費用は、依頼する建築士や機関によって異なります。なるべく費用をかけずに取得したいのであれば、よく比較してから申請先を決めましょう。
耐震基準適合証明書を発行する費用は決して安いものではありませんが、得られるメリットをふまえると申請して損はないといえます。
いつ必要?「耐震基準適合証明書」取得のタイミング
買い主が耐震基準適合証明書は、「引き渡し前」に仮申請し耐震診断を経て証明書を取得しましょう。
ここでは、取得のタイミングが「物件の引き渡し前後」で何が変わるのか具体的に説明します。
物件の引き渡し前後で何が変わる?
耐震基準適合証明書取得のタイミングが「物件の引き渡し前後」では、住宅購入で利用できる軽減措置が受けられなくなるので注意しましょう。
例えば、住宅ローン控除の適用は「引き渡し後」に耐震診断が行われたことが明らかになると、減税対象外になってしまいます。
それ以外にも、住宅関連の軽減措置を受けるには、耐震基準適合証明書が必要となるケースがほとんどです。
前述の通り、取得までには1〜3か月かかるということから、引き渡し後に証明書を取得していたのでは、申請に間に合わず減税などが受けられなくなってしまいます。
このことから、「引き渡し前」に取得することが重要です。
耐震基準適合証明書を取得するメリットとは?
ここでは、耐震基準適合証明書で得られるメリットを5つご紹介します。
・住宅ローン控除を受けられる
・登録免許税の軽減措置を受けられる
・不動産取得税の軽減措置を受けられる
・地震保険料の割引制度を受けられる
それぞれについて詳しくみていきましょう。
①住宅ローン控除を受けられる
耐震基準適合証明書によって得られるメリットの1つ目は、住宅ローン控除を受けられることです。
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して家を購入した際に、一定の条件を満たしていれば、所得税から控除される制度のこと。
その条件のなかに「築年数」があります。
・コンクリート造(マンションなど):築25年以内
・木造(戸建てなど):築20年以内
本来であれば、上記の築年数以内でなければ住宅ローン控除が適用されません。しかし、耐震基準適合証明書があることで、住宅ローン減税を受けられるようになります。
住宅ローン控除が適用されれば、年間数十万円以上の控除が可能になり、とても大きなメリットといえるでしょう。
②登録免許税の軽減措置を受けられる
耐震基準適合証明書があれば、登記手続きをする際に国に納める登録免許税を軽減できるのがメリットです。
登録免許税とは、土地や住宅を取得すると、権利を明らかにするために移転登記(所有権移転・抵当権設定)が行われます。その際、所有権を登記したことに対して課税される税金のことです。
耐震基準適合証明書を「所有権移転前までに取得」することにより、以下のように登録免許税の軽減措置を受けられます。
耐震基準適合証明書「取得前」の税率 |
耐震基準適合証明書「取得後」の税率 |
|
住宅用家屋の所有権移転登記 |
2.0% |
0.3% |
住宅ローンの抵当権設定時の登録免許税 |
0.4% |
0.1% |
③不動産取得税の軽減措置を受けられる
耐震基準適合証明書があれば、不動産取得税の軽減制度を受けられることがメリットです。
不動産取得税は、家を購入した際に必ずかかる税金の1つ。登録免許税と同じく、不動産を取得したときに1度だけ納めます。
本来、不動産取得税の減税は1982年1月1日以降に建てられた物件が対象となり、それより前に建てられた建物は軽減措置の対象外です。
しかし、耐震基準適合証明書があれば、以下の計算法が用いられて算出します。
不動産取得税=(固定資産税評価額-控除額)×3%
不動産取得税の納税額は、何十万円から何百万円と高額です。軽減措置を受けられれば、不動産取得税をかなり抑えられるでしょう。
④地震保険料の割引制度を受けられる
耐震基準適合証明書があれば、地震保険料の割引制度を受けられます。
家の購入とともに、地震保険に加入することが一般的です。その際、地震保険には「耐震診断割引」という制度が用意されており、耐震基準適合証明書があれば割引制度の対象になります。
耐震診断割引は、地震保険料に対し10〜50%の割引が適用されますが、各保険会社によって割引率が異なるため、事前に確認して保険会社を決めるとよいかもしれません。
耐震基準適合証明書を取得する際の注意点とは?
耐震基準適合証明書を得る際の注意点は、以下の3つです。
・耐震基準適合証明書を取得できないこともある
・不動産業者が教えてくれないことがある
・入居翌年に確定申告が必要になる
それぞれについて詳しくみていきましょう。
①耐震基準適合証明書を取得できないこともある
申請をしたからといって、耐震基準適合証明書が必ず取得できるわけではないことを念頭におきましょう。
一般的に築年数が経ち、建物が古くなるほど耐震性も低くなる傾向にあります。そのため耐震診断をした際、耐震基準に適合せず発行してもらえないケースも少なくありません。
具体的には、1981年6月1日以前に建築された「旧耐震基準」に基づいて建てられた家は、大規模な改修工事や建替をしない限り、耐震基準に適合するのは難しいといえます。
しかし、適切な耐震改修工事がされており、かつその工事内容を確認できる図面があれば、取得できるかもしれません。依頼する前に、建築士や診断業者へ相談したほうがよいでしょう。
②不動産会社が教えてくれないケースがある
耐震基準適合証明書で得られるメリットや注意点など、不動産会社が教えてくれないケースがあるので注意しましょう。
購入前の検討段階で、耐震基準適合証明書の存在について教えてくれればよいのですが、不動産会社側の知識不足から知らされない場合があります。
それにより、早い段階に耐震基準適合証明書について知っていれば取得できたのにもかかわらず、教えてもらえなかったことが原因で「耐震基準適合証明書の申請に間に合わない…」というケースも少なくありません。
そのため、中古物件を購入する際には、不動産知識が豊富で信頼できる不動産会社を選ぶことが重要です。
③住宅ローン控除を受けるには確定申告が必要
入居した翌年に、耐震基準適合証明書を含めた必要書類を添付したうえで確定申告を行わないと、住宅ローン控除が適用されません。
取得のタイミングや、入居から確定申告までに長い時間経過してしまうと、忘れがちになるため注意が必要です。
また、住宅ローン控除を受けるための確定申告は、入居した翌年の1度きりとなり、それ以降は年末調整だけで控除を受けられるようになります。
検査済証がない場合はどうする?
検査済証がない場合でも、耐震基準適合証明書の発行を依頼する建築士や、検査機関に相談してみましょう。
検査済証がなくても耐震診断を行ったうえで、耐震性に問題がないと判断されれば、検査済証に変わる書類が発行できる場合があります。
また、自治体の建築指導課に発行された履歴が残っているケースもありますので、物件が立地している役所に検査済証が残っていないか、一度問い合わせてみましょう。
中古物件を購入する際は耐震基準適合証明書は手に入れよう!
耐震基準適合証明書とは、建物が建築基準法に定める耐震基準に適用をしていることを証明する書類です。
耐震性がある建物と判断できる以外にも、住宅ローン控除や住宅関連に関わる税金が軽減されるなどのメリットが得られるため、中古物件を購入する際に入手しておきたい書類です。
しかしメリットを得るためには、取得するタイミングや気をつけなければならない点がいくつかあります。
そのため、耐震基準適合証明書を入手する際は、今回ご紹介した取得方法や注意点をお役立てください。
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