不動産は高額な買い物で、大抵の人が住宅ローンを組んで購入しています。このため不動産の売主や貸主、ローン契約をする金融機関側は、事前に相手の経済状況を調べてから正式な取引に移ります。その際に必要になるのが収入を証明する書類です。
今回は不動産契約時に提出を求められる収入証明書について、知識を深めていきましょう。
収入証明書とは?
「収入証明書」という名の証明書は実は存在しません。個人の収入を証明する各種証明書を総称して収入証明書と呼ぶのが一般的です。
日本は国民の義務として納税を課しています。収入や賃金に対する納税額を計算したり、従業員に賃金の支払い額を通知するのに、収入証明書は重要な役割を果たしています。
不動産会社や金融機関からすると、これらの収入証明書は取引相手がどれくらいの収入を得ているのか、経済力があるか否かを測る重要なツールとなります。証明書の数字が取引の決め手となるのです。実際、収入証明書が理由で取引不成立となる場合もあります。
納税証明書との違いは?
収入証明書は文字通り、その人の収入額を証明する書類です。どんな会社からどれくらいの収入を得ているのかが、ひと目でわかるようになっています。
一方、納税証明書は納税をしたことを証明する書類です。税金にはいろいろな種類があり、所得税や法人税、相続税、自動車税、不動産取得税、住民税、固定資産税など様々です。これらの各種税金毎に、納税後に納税証明書が発行されます。
それぞれ国税、都道府県税、市税に大きく分かれ、手続きの窓口も異なります。また納税証明書を見ただけでは、その人の正確な所得金額を把握することはできません。所得証明書として認められないことがほとんどです。
収入証明書の内容と取得方法
収入証明書として認められる書類には様々な種類があります。不動産売買時に収入証明書として有効になる書類を以下でご紹介します。
収入証明書の種類 |
内容 |
取得方法 |
所得証明書・源泉徴収票 |
所得証明書 源泉徴収票は会社員やパート、アルバイトの人が、働いている企業から受け取る1年間の所得のまとめのこと。企業側は個々の社員の細かな控除まで把握していないため、あらかじめ概算で税金を多く徴収することが多くなっており、年末の源泉徴収票には、多く取り過ぎた住民税の還付額が記載されている。 |
所得証明書は市区町村の役所で申請して入手する。その際は、本人確認書類と手数料が必要。1年の集計となるため、年度の途中では発行されない。 源泉徴収票は12月後半に勤務先の企業から渡されるのを待つ。 |
課税証明書 |
市区町村によっては上記の所得証明書とイコールの扱いとなる書類。住民税額や所得額、扶養家族の人数などがこの書類から分かる。収入が基準より少ない場合は非課税証明書となり、税金が課されていないことが証明できる。 |
その年の1月1日に住所を置いていた自治体で発行してもらえる。印鑑や各種本人確認書類が必要。郵送でも申請できるが、返信用封筒と定額小為替を同封することが必須。 |
給与明細書 |
会社員やパート、アルバイトとして会社で働いている人が、毎月給料支給日に会社からもらう明細書。支給額やそこから引かれる税金などの控除額の内訳が書かれており、月単位の所得の現状がわかる書類となっている。 |
勤めている会社から毎月渡される。 |
所得証明書の見方
会社に同じ収入の同期社員がいても、何故か自分はその人より手取りが少ない、そんな疑問を持ったことがある方も多いのではないでしょうか。所得証明書を見れば、その理由が分かります。
ここでは所得証明書の中でポイントとなるキーワードをご紹介します。似たような意味に受け取られがちなワードが多いので、違いを押さえましょう。
用語 |
内容 |
収入 |
会社などの勤め先からもらった給与の総額のこと。「月収」や「年収」と呼ばれるものが収入にあたる。 |
所得 |
所得は収入から必要経費(会社員の場合は給与所得控除)を引いた後の金額のこと。住民税は収入ではなく所得を基準にして算出される。 |
手取り |
文字通り実際に手に入るのが手取りで、社会保険料や所得税、住民などが引かれた最終結果の金額。給与明細では「総支給額」「差し引き支給額」「控除合計額」などという書き方がされている。 |
所得控除 |
納税者の税負担を軽くしてくれる救済措置とも言えるのが所得控除。全部で15種類あり基礎控除や配偶者控除、扶養控除、医療費控除、寄付金控除、ひとり親控除など、条件に該当すると所得から控除が受けられて税額が軽減される。 |
合計所得金額 |
会社勤めの給与所得以外にも様々な収入がある人もおり、不動産所得、事業所得、配当所得、利子所得、退職金所得、山林所得、雑所得など、全ての所得を合わせたのが合計所得金額となる。 |
総所得金額等 |
合計所得金額から純損失や雑損失の繰越控除を行った後の合計所得のこと。医療費控除や寄付金控除を計算する際に必要な金額。 |
課税標準額 |
給与所得から各種所得控除を差し引いたのが課税標準額。課税所得額とも呼ばれる。課税されるべき所得で、所得税を計算する時に重要になる数字。 |
所得証明書の3つの注意点
所得証明書は上記のように様々な種類があり用語の定義も似通っているため、多くの人が混乱する原因となっています。
また、説明を理解しても実際の手続きの際にはスムーズにいかず、何度も手続きをやり直すという経験をする人も少なくありません。いろいろなトラブルが起こるのには、以下のような原因があります。注意点を確認しておきましょう。
市町村によって定義や内容が違う
所得証明書の各種申請書フォームや用語の定義は、住んでいる市区町村によって違うということが度々あります。銀行や不動産会社から所得証明書を用意するように言われたら、書類名よりもどんな項目が書かれていることが必須なのかをしっかり聞き取って、申請窓口でも用途を話すようにすれば、ミスを軽減できるでしょう。
また、最近は所得証明をコンビニでも取れるところが増えてきましたが、これも市町村によってまちまちです。役所などに出向く前に事前に電話で確認してからにすると、二度手間にならずに済みます。
「証明年度」と「所得の対象年度」は違う
所得証明は何年度の分を取得するかが重要です。関係のない年度のものを取得してしまうと、審査に使えず差し戻されてしまいます。必ず何年度の分が必要なのかを確認してから準備しましょう。
例えば令和3年度の所得証明書には、令和2年1月から12月までの所得が記載されています。つまり前年の所得内容が翌年の所得証明書になります。証明書の年度と実際の所得年度は異なるので、十分注意しましょう。
証明書は申告しないと発行されない
所得証明書は本人が税の申告をしていなければ発行されません。会社員としての収入のみの人は会社が年末調整の手続きをしてくれているので、問題ありません。副業をしていたり個人事業主として収入を得ている場合は、確定申告で税金を申告しなければ国も市区町村も把握ができないため、所得証明書の発行ができません。
正確な所得証明書を発行してもらうためにも、確定申告を怠らないことが大切です。確定申告をする人は、申告が終わって税額が確定するまでは所得証明書が発行されないので、注意が必要です。
事前準備は早めに行おう
いかがでしたか。不動産購入時に提出が求められる所得証明書や課税証明書についてご紹介しました。第一のハードルである所得基準審査をクリアすれば、不動産購入は一気に進みます。取引相手との信頼関係を上手に築くためにも、求められた書類を遅れることなく提出できるようにしましょう。
各種書類の違いは難しいため、不動産会社やハウスメーカーの担当者にも細かく相談してみましょう。また、税務署やファイナンシャルプランナーの無料相談などでもアドバイスをもらえるので、そのような機会も便利に活用してみることをおすすめします。
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