一生で一番大きな買い物といわれる、マイホームの購入。
住宅ローンを組んでの住宅購入が一般的ですが、不況や病気などによる家計状況の変化で月々のローン返済が難しくなってしまうケースもあります。
不安の多い時勢で、もし住宅ローンの返済ができなくなってしまったら…。
そんなときのひとつの手段として、知っておきたい「任意売却」についてご紹介します。
任意売却とは?
任意売却とは、住宅ローンの返済ができなくなってしまったときに、債権者である金融機関(銀行など)との話し合いの上で住宅を売却することです。
住宅ローンを組んで物件を購入した場合、物件には「抵当権」が設定されています。
抵当権とは金融機関が債権(住宅ローンの残債)を回収するために不動産を競売によって売却する権利をさします。
抵当権が設定されている住宅には買い手がつきませんので、売却にともない抵当権を抹消する必要があります。
しかし、抵当権を抹消するには住宅ローンを完済しなければなりません。
- 住宅が住宅ローンの残額より高い金額で売却できる場合
- 住宅の売却金額が住宅ローンの残額より少ない場合でも、差額を現金で準備できる場合
売却によって住宅ローンを完済することができるので問題ないのですが、月々の返済が滞っている状態で差額分の現金を用意するのは現実的ではありません。
住宅の売却によって住宅ローンの完済が見込めない場合でも、金融機関と協議し許可を得たうえで抵当権を抹消した住宅を売却する方法が任意売却なのです。
売却方法は3つある!
住宅ローンが残った状態で物件を売却する場合、売却方法は
- 任意売却
- 通常仲介売却
- 競売
という、3つがあります。
通常仲介売却、競売について確認したうえで、それぞれの違いについてみていきましょう。
通常仲介売却とは?
通常仲介売却とは、不動産会社に仲介業務を依頼して住宅を売却する、一般的な売却方法のことです。
仲介によって住宅を売却する場合は、売却する時期や売り出し価格なども全て売り主が決めることができます。売却することについて金融機関に許可をもらう必要もありません。
ただし売却後に住宅ローンを一括で完済する必要がありますので、
- 売却金額によって住宅ローンを完済できる場合
- 売却金額と住宅ローンの残債分を現金で用意できる場合
のみ可能となります。
競売とは?
競売とは債権者(抵当権をもつ金融機関)が裁判所を通じ、債務者の不動産を競売にかけて売却する方法です。
競売は「金融機関が住宅ローンによる貸付金額を回収するために不動産を強制売却する」ということになりますので、家主の都合は考慮されません。
売り出し価格を決めることもできませんし、退去日は落札者の都合によって決定されます。
通常仲介売却、任意売却、競売の違いは主に
- 売り出し価格の決定権は誰にあるのか
- 販売価格の相場はどの程度となるのか
- 家主が退去時期を決められるか
となり、まとめるとこのようになります。
売り出し価格の設定 |
販売価格 |
退去時期 |
|
通常仲介売却 |
売主 |
自由 |
売主が決められる |
任意売却 |
金融機関と協議 |
物件相場程度 |
買い手と相談 |
競売 |
裁判所が決定 |
相場より3~4割安い |
落札者都合で決定 |
可能であれば通常仲介売却が最善といえますが、難しい場合は任意売却を金融機関と相談することになるでしょう。
リスケジュールとは、金融機関に相談の上、返済期間の延長や一時的な返済猶予をおこなうことです。
結果的に任意売却をする場合でも、早めに相談しておくことでその後の話し合いや準備が進めやすくなりますよ。
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任意売却をする9つの手順
リスケジュールによって返済期間を延ばしたうえでも住宅ローンの返済が難しい場合や、すでに滞納してしまっており、任意売却をすることになった場合、どのような手順になるのでしょうか。
ここでは一般的な任意売却の流れについてみていきます。
①金融機関から催促が来る
住宅ローンの支払いが滞ると1ヵ月ほどで金融機関から督促状が届きます。
督促を放置してしまうと3〜6ヶ月ほどで「期限の利益喪失」が通知されて、住宅ローンを分割で返済する権利が失われ、以降は住宅ローンの残債について、一括で返済することが求められます。
ほとんどの債務者は一括返済できませんが、何も対処せずにいると任意売却もできず、競売による強制売却の手続きがすすめられることになってしまうのです。
②現状を知るために金融機関に確認する
住宅ローンの返済が厳しくなってしまったら、まずは金融機関に問い合わせ、現状を確認する必要があります。
督促状が届いた段階か、可能であれば返済が難しいと分かった時点で金融機関に相談するのが望ましいでしょう。その後の話し合いや準備がすすめやすくなります。
- 住宅ローンの残債
- 滞納している金額や延滞金
- 家計の状況
- 売却する場合、どの程度の価格で売れそうか
について確認したうえで、どう返済していくのか、任意売却を行うかを検討します。
③不動産会社の選定をする
住居を売却すると決めたら、任意売却を行ってくれる不動産会社を探します。
売り出し価格の設定や、そもそも任意売却が可能か否かは金融機関との協議によって決まります。
そのため、先に信頼できる不動産会社を見つけて相談することで、売主にできるだけ不都合なくすすめられるように方針を考えることができます。
④金融機関に残高証明の送付を依頼する
任意売却を依頼する不動産会社が決まったら、借り入れ先の金融機関に残高証明を送ってもらいましょう。
すでに住宅ローンの返済を滞納してしまっている場合でも「返済が困難となってしまったため、任意売却を検討している」と伝えれば、無理な一括返済を求められることはありません。
送付された残高証明で残債の詳細について確認します。
⑤不動産会社に物件の査定をしてもらう
住宅ローンの詳細な残高が確認できたら、不動産会社に物件の査定をしてもらいます。
売り出し価格については金融機関との協議になりますが、最終的な決定権は債権者である金融機関にあります。
いくら売主が高く売りたいと考えていても金融機関の合意が得られなければ任意売却できませんので、買い手がつくであろう現実的な価格を設定する必要があります。
⑥任意売却の開始
不動産会社の担当者と販売価格やスケジュールなどを相談した上で、任意売却の申請を行い、金融機関の許可を得た上で売却が進められます。
通常の不動産取引と同様、不動産会社が販売活動を行い、買主を探すことになります。
競売と違い、任意売却の物件は仲介の場合と同様に内覧が可能です。購入希望者の内覧が始まる前にできるかぎり室内を掃除しておく必要があります。
⑦売買契約の締結
無事買主が見つかれば、購入申込書と売買代金配分表を債権者(金融機関)に提出し、売却の許可を求めます。
買主との不動産売買契約は、金融機関からの許可が得られたうえで締結することになります。
売買契約の締結自体は通常の不動産取引と同様で、価格や物件の引き渡し日を確認した上で売買契約書への署名・捺印を行います。
⑧不動産の決済・引渡し
契約から通常1ヵ月ほどで物件は引渡しとなりますので、それにあわせて売り主は住居内の片付けなど退去の準備や、引っ越しとそれにともなう手続きをすすめます。
並行して債権者・抵当権者あてに書類を提出し、任意売却を行った業者(不動産会社)が代行して抵当権の抹消手続きなどを行います。
⑨残債務の返済
多くの場合、任意売却を行っても住宅ローンは完済とならず、一部が残債となってしまいます。
ただし、債権者である金融機関も債務者が「住宅ローンを支払うことができず任意売却を選択した」ということを了承しているので、無理に残債の返済を求めることはほぼありません。
金融機関との交渉によりますが、多くの場合、任意売却後の新しい生活に無理のない範囲で返済していくことになります。
任意売却をする際の3つの注意点とは?
任意売却をする際、住宅ローンの残高以外にも注意すべき点があります。
- マンションの場合、管理費や修繕積立金の支払い状況
- 売却する際にかかる費用の把握
- 売却後の引っ越し代や生活費の確保
いずれも任意売却が上手くいくか、その後の生活が成り立つかにかかわるポイントとなります。
①マンションの場合管理費や修繕積立金が完済しているか確認する
任意売却を行う物件がマンションの場合、必ず確認しておくべきなのが管理費や修繕積立金の支払い状況です。
- 管理費や修繕積立金を未払いのまま売却すると、買主に支払いの義務が引き継がれてしまう
- 管理費や修繕積立金の滞納額が大きい場合や、滞納の状況が悪質であれば、管理組合の判断で訴訟を起こされてしまうことがある
このため、管理費や修繕積立金が未払いのままでは任意売却をしようにも買い手がつかなかったり、訴訟を起こされた場合、任意売却をする前に競売にかけられてしまうこともありえます。
住宅ローンの返済が滞ってしまった方の多くが、マンションの管理費や修繕積立金も滞納してしまっているようです。
任意売却自体ができなくなってしまうことがありますので、管理費や修繕積立金の支払いは終えているか、滞納している場合はどのように精算するのかを確認する必要があります。
②売却する際にかかる費用を把握しておく
任意売却の場合でも、通常仲介売却と同程度の費用がかかります。
必ずかかってくるものとしては
- 不動産会社への仲介手数料
- 登記費用(抵当権を抹消登録するための費用)
- ローンの一括返済にともなう手数料
- 印紙税
が挙げられます。
これらは売却代金から支払うことになるため事前に工面する必要はありませんが、その分ローンの残債が増えてしまうことになります。おおよその金額は把握しておくとよいでしょう。
③売却後の引越し代や生活費を確保しておく
任意売却の場合、債権者(金融機関)に売却金額から引越し費用(生活準備金)の配分を認めてもらえるケースがあります。
売主が物件を引き渡すことができずに売却が成立しない、ということを避けるためで、おおむね20~30万円程度のことが多いようです。
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任意売却ができない3つのケース
住宅ローンを滞納している状態でも、任意売却ができないケースもあります。
ここでは、
- 債権者(金融機関)の許可が得られない
- 名義人の許可が降りない
- 買い手がつかない
という、3つのパターンについてご紹介します。
①金融機関が任意売却を認めていないケース
任意売却は金融機関の許可を得たうえで、売却によって住宅ローンの完済が見込めない場合でも住宅を売却することができる手段です。
よって、金融機関の許可が降りなければ任意売却はできません。
基本方針として任意売却を認めていない金融機関も存在するほか、滞納を開きなおるなど債務者の態度の問題で交渉がうまくいかず許可が得られない場合もあります。
②名義人の許可が降りないケース
任意売却でも、売買の手続きは一般の売却と同じようにすすみます。
そのため売買契約をかわすうえで、名義人の本人が臨席し、物件を売却する意思を示すことが必要になります。
例え同居の家族全員が任意売却を望んでいても、住宅の名義人である人物が拒否した場合や、夫婦の共同名義となっている物件でどちらかが売却を許可しない場合は任意売却をすることはできません。
③買い手がつかないケース
そもそも買い手がみつからないという場合もありえます。
理由としては通常の物件売買と同じで
- 価格が適切ではない
- 条件(立地や住宅の状態)が悪い
- 内覧ができない
などが挙げられます。
少しでも住宅ローンを返済したいという心情から、売主が高めの金額設定にしてしまっているケースもあるようです。
買い手がみつからなければ任意売却はできず、競売の準備がすすんでしまうことになります。
任意売却も視野に入れよう
住宅ローンの返済ができなくなってしまったときの売却方法、任意売却についてご紹介しました。
どれだけ計算して計画を立てても、思ってもみなかった事態は起こりえます。
万が一のときにも手段はあることを知っておく、厳しいと感じたらすみやかにしかるべきところへ相談することが、どんな場合でも大切です。
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