長期優良住宅とは「長期優良住宅認定制度」の基準を満たした住宅です。
認定されると、税金の控除や補助金等、金銭面でさまざまな利点がある一方、建築コストや住宅維持の手間がかかる欠点もあります。
長期優良住宅認定の基準から建てるときの注意点まで解説します。迷っている方に参考となる情報を提供しますので、ぜひ最後までご覧ください。
長期優良住宅認定の9つの基準
長期優良住宅は、9つの基準を全て満たす必要があります。
- 劣化対策
- 耐震性
- 可変性
- 維持管理
- 高齢者等対策
- 省エネルギー対策
- 住戸面積
- 居住環境への配慮
- 維持保全計画
なお戸建て住宅と共同住宅では、基準が異なります。例えば一戸建ての住宅には、可変性と高齢者等対策の認定基準が設けられていません。
長期優良住宅認定制度で説明されている順番に基づき、9つの基準を解説していきます。
劣化対策
劣化対策等級(構造躯体等)等級3、かつ構造の種類に応じた基準を満たさなければなりません。
劣化対策等級とは、シロアリ対策などの構造躯体の劣化対策の等級を指します。等級3は75年〜90年程度の3世代まで、長持ちするように対策が講じられている段階です。
構造種類に応じた基準は、例えば木造では床下空間の有効高さ330㎜以上で床下と小屋裏に点検口の設置が必要になります。
耐震性
下記の3点のうちいずれかの条件を満たす必要があります。
- 耐震等級(倒壊等防止)等級2、
- 耐震等級(倒壊等防止)1かつ、安全限界時の層間変形1/100(木造の場合は1/40)以下を確認できる
- または品確法に定める免震建築物
耐震等級2は、震度6〜7に耐えられる耐久等級1の1.25倍の地震で崩壊しない性能の水準です。
安心限界とは震災時に建物が倒壊せず、人命の安全が確保できる限界の状態を指します。層間変形とは地震の横揺れによって、建築物の形が変わった際の上階の床と下階の床が変形した差のことです。
免震建築物は、地震の揺れを吸収する免振装置の上に住宅が乗った構造の建物を指します。
可変性
共同住宅に適用される基準で、躯体天井高が2.65m以上なければなりません。躯体天井高は、住戸専用部の構造躯体等の床版等に挟まれた空間を指します。この基準は、ライフスタイルの変化に応じて、間取りを変化させるために設定されました。
維持管理
維持管理等級(専用配管)等級3の基準を満たす必要があります。維持管理等級とは配管の清掃や補修のしやすさ、ガス管などの維持管理をしやすくするための対策を評価するものです。等級3の認定には、下記の3点の基準を全てクリアする必要があります。
- 共同住宅等で他の住居に入らずに、専用配管の点検や管理ができる
- 配管がコンクリートに埋め込まれておらず、躯体を傷つけず補修ができる
- 点検口や掃除口が設けられており、躯体や仕上げ材を傷つけずに清掃できる
また共同住宅の場合、維持管理等級に加えて更新対策(共用排水管)等級3の基準を満たさなければなりません。更新対策(共用排水管)等級3は、マンションの共用排水管の配管が共用部にあり、かつ簡単に更新できるように特に配慮されているものです。具体例としては、共用配管が建物の外周部やバルコニーに設置されていることが挙げられます。
高齢者等対策
共同住宅に適用される基準で、高齢者等配慮対策等級(共用部分)等級3を満たさなければなりません。 高齢者等配慮対策等級(共用部分)等級3とは、高齢者が安全に移動するための基本的な措置が講じられており、介助式車いす使用者が基本的な生活ができる基本的な措置が講じられている段階です。例えば寝室とトイレは同じ階にあり、階段や浴室、トイレに手すりの設置が必要になります。
省エネルギー対策
断熱等性能等級4を満たす必要があります。断熱等性能等級4とは、品確法の中で定められた断熱に関する指標で、平成11年基準をクリアしている証拠です。例えば、開口部には複層ガラスを使用しなければいけません。等級4になると、無断熱の建物と比べて約60%の省エネが実現され、年間では約8万円の冷暖房費をカットできます。
参照:一般社団法人日本サステナブル建築協会「住宅の省エネルギー基準」
住戸面積
一戸建ての場合は75㎡以上、共同住宅の場合は55㎡以上の面積が必要です。また、一戸建てでは上記の条件に加えて、少なくとも1階の面積が階段の面積を除き40㎡以上なければいけません。
ただしこの基準は、地域によって管轄行政庁が引き上げや引き下げを行う可能性があるため、注意が必要です。
居住環境への配慮
居住地区に定められた地区計画、景観計画に則って街並みに調和する外観で建築することが求められています。例えば東京都では、外観に関する色彩のガイドラインが定められており、遵守しなければなりません。各地域によって設定されているため、下記のURLから管轄の行政庁を検索して事前に確認しましょう。
参照:一般社団法人住宅性能評価・表示協会 長期優良住宅建築等計画の認定を行う所管行政庁の検索
維持保全計画
下記の部分・設備において定期的な点検・補修等に関する計画を策定する必要があります。
- 構造耐力主要な部分
- 雨水の浸入を防止する部分
- 給水・排水の設備
(1)~(3)のそれぞれ点検時期や手入れの内容を計画します。居住後は、作成した維持保全計画に則ってメンテナンスを行い、その状況を記録しなければなりません。メンテナンスの記録は管轄の行政庁から報告が求められます。
認定を受けた住宅の維持保全されていないときは、管轄の行政庁から改善命令や是正指導され、従わなかった場合は、認定を取り消される恐れがあります。
また管轄の行政庁から報告に応じない場合や、虚偽の報告をした場合には30万円以下の罰金が処せられることがあるためご注意ください。
長期優良住宅のメリットとは?
長期優良住宅には家の資産価値を上げられるほかさまざまな控除を受けることが可能です。資産価値の上昇から順に説明していきます。
家の資産価値を上げられる
長期優良住宅は、一般的な住宅より長く使用する前提で建築された住宅のため、建物の劣化が少なくなります。その結果家の資産価値が落ちにくく、売却時にも価格が高くつきやすい傾向です。また、80年前後長持ちする劣化対策が取られているため、親子2世代に渡って住むことができます。
さまざまな税金の控除と優遇が受けられる
(1)不動産取得税の減税
不動産購入時にかかる不動産取得税の控除額が、一般住宅より100万円多くなります。
一般住宅は1200万円に対し、長期優良住宅は1300万円です。
(2)固定資産税の減税
新築住宅を建設、購入した場合は固定資産税が2分の1に減額されます。
長期優良住宅の場合は、一般住宅よりも減税期間が2年間延長されます。一般住宅の一戸建ては3年間、共同住宅で5年間に対し、長期優良住宅は一戸建てが5年間、共同住宅が7年間です。
(3)登録免許税の引き下げ
長期優良住宅は登録免許税の税率が一般住宅より安く設定されています。住宅を新築したときに所有権保存登記、中古住宅を購入したときは所有権移転登記申請が必要です。この申請時にかかる税金が、登録免許税になります。実際の税率は下記をご覧ください。
所有権保存登記の税率 |
所有権移転登記の税率 |
|
長期優良住宅 |
0.1% |
0.2% |
一般住宅 |
0.15% |
0.3% |
住宅ローンの金利優遇・限度額引き上げ
特別金利が適用されるフラット35Sを利用でき、最大10年間にわたり、通常固定金利から0.25%引き下げが可能です。また長期優良住宅の住宅ローン限度額が一般住宅に比べて、2000万円多い5000万円に上がります。
補助金が利用可能
地域型住宅グリーン化事業の長寿命化に関する補助金として、最大140万円を受け取れる可能性があります。補助金を申請できる条件は、国土交通省の認定を受けた中小工務店で木造住宅を建てることです。建築に地元の木材を使用するとより加算金が受け取れる可能性があります。
地震保険料の割引
長期優良住宅は地震保険料の割引対象になります。長期優良住宅は、割引対象の耐震等級2以上の基準を満たしているからです。耐震等級2の割引率は20%。耐震等級3の割引率は30%になります。
長期優良住宅のデメリットとは?
長期優良住宅のデメリットを、住宅を建てるまでの流れに沿ってご紹介します。
認定に時間と費用がかかさむ
管轄の行政庁による長期優良住宅の認定には、1週間〜1ヶ月かかる場合があります。審査期間を短く依頼することはできませんので、急いで建てたい場合は注意しましょう。
また申請費用が合計で20〜30万円かかります。申請及び審査費用は管轄の行政庁によって異なりますが、5〜6万円が相場です。また住宅建設会社に書類作成を依頼するため、手数料が約15万〜25万円かかります。
建てた後に住宅の性能維持費用と手間がかかる
長期優良住宅では、維持保全計画に基づき点検や補修を続けなければなりません。管轄の行政庁にメンテナンスの報告を怠ると、認定が取り消されます。
そのため維持保全に関する記録を取り続ける手間がかかり、また修繕の出費がかさみます。
建築コストをより要する
長期優良住宅の認定を受ける基準を満たすためには、建築コストが上がります。なぜなら劣化対策や耐震性等の条件をクリアしなければならないためです。例えば、材質や工期が長いことによる人件費がコスト上昇につながります。
長期優良住宅の建てる前の3つの注意点
長期優良住宅を建てる前に3つの注意点を、実際の建設までの順番に基づきご説明します。
家の資産価値・建築コスト・節税費用等のバランスを考える
長期優良住宅の申請や、維持には多くの費用がかかります。その分節税や家の資産価値が上がりますが、建築コストが上回るかもしれません。資産価値や節税コストなどのバランスをあらかじめ考えてから申請しましょう。
長期優良住宅の得意な建築会社を探す
コストアップをできるだけ抑えるために、実績のある建築会社に依頼しましょう。実績の豊富な企業なら、申請や施工のノウハウがあり、点検等の長期的なフォローも安心して受けられます。また、長期優良住宅対応の商品が用意されている企業で建築を依頼すれば、コストの上昇を抑えることが可能です。
工事着工前に申請する
長期優良住宅の認定を受けるには、必ず工事着工前に申請しなければなりません。そのため、認定を受けるか迷っている場合は、工事開始前に決めておく必要があります。
まとめ
ここまで長期優良住宅の認定基準や、メリットとデメリット、建てるまでの注意点を解説しました。長期優良住宅は、維持管理費用がかかりますが家の資産の価値が上がります。メリットと費用負担を考え、長期優良住宅を建てたい場合は実績のある建築会社を選びましょう。
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