長期優良住宅の住宅ローン控除が一般住宅と違うのはご存知ですか?
この他にも、長期優良住宅には住宅ローン控除を始めとしたいくつものメリットがあります。
長期優良住宅の認定を受けるデメリットや申請の流れについてもご紹介するので、住宅を購入する前に確認しましょう!
長期優良住宅はどのような家なのか
平成21年6月に「長期優良住宅認定制度」が施行され、平成28年4月にはリフォームをした家も対象になりました。
まず、長期優良住宅が一般的な家とどのように違うのかご紹介します。
長期優良住宅について
長期優良住宅について国土交通省のサイトを見ると以下のように定義づけされています。
- 住宅の構造および設備について長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられていること。
- 住宅の面積が良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること。
- 地域の居住環境の維持・向上に配慮されたものであること。
- 維持保全計画が適切なものであること。
- 自然災害による被害の発生の防止、軽減に配慮がされたものであること。
つまり、長期優良住宅とは、「長期に渡り快適な生活が可能な住宅」で、「たとえ自然災害に見舞われたとしても居住が不可能になるような被害がでない住宅」といえます。
例えば、屋根や外壁を断熱性が高いものにすることで、夏は熱がこもらない住宅に、逆に冬は温度を外に逃がさない住宅になるので、冷暖房の光熱費をかなり抑えることが可能。
電気の使用を控えることは、環境の保全に繋がります。
また、耐震性能を高める構造を取り入れることで、大地震がきても倒壊せず、その後も住めるようにすることも可能。
このように、住宅の性能を高めた住宅は一般的な住宅よりも安心安全で、快適な生活ができるだけでなく、自然環境の保全にもなります。
長期優良住宅と認めてもらうために必要な項目
長期優良住宅と認定してもらうには、必要項目を満たす住宅にしなくてはいけません。
審査でチェックされる項目を以下にまとめました。
【戸建て住宅】
劣化対策 |
構造躯体が数世代にわたり使用できるか |
耐震性 |
建築基準法で定められた耐震等級1が耐えられる地震力の1.25倍(耐震等級2)または1.5倍(耐震等級3)の地震が発生しても耐えられるか |
維持管理 |
住宅設備の点検や補修などのメンテナンスがしやすいかどうか |
省エネルギー |
断熱性など、省エネルギー対策がされているかどうか |
【共同住宅など】
可変性 |
居住者のライフスタイルに合わせた間取りの変更ができるかどうか |
バリアフリー性 |
現在バリアフリーでなくても、将来工事をすることになった際に必要なスペースがあるかどうか |
【その他の項目】
居住環境 |
住宅周辺の景観を損なわないか。居住環境の維持・向上に配慮しているか |
住戸面積 |
良好な生活を送れる広さがあるかどうか |
維持保全計画 |
長期にわたり居住できるよう、定期的なメンテナンスの計画ができているかどうか |
なお、より詳細な基準については以下でも詳しく解説されています。
長期優良住宅の方が断然メリットは大きい
長期優良住宅には安全で安心な生活を送れる以外にもメリットがあります。
その中でも住宅ローン控除に関する項目は一般的な住宅を購入する場合と大きく異なるので、しっかりと確認しましょう。
ただ、令和4年度税制改正大綱では「借入限度額の上乗せ措置は終了し、住宅性能などに応じた上乗せ措置を講ずる。」とあります。(『令和4年度税制改正大綱』より引用)
それに合わせて、最大控除額も引き下げられるので、近いうちに家の購入またはリフォームを考えていて、長期優良住宅に興味がある方は借入限度額が変わるタイミングを逃さないようにしましょう。
住宅ローン控除の大きな違い
①借入限度額
入居のタイミング |
長期優良住宅(新築) |
一般的な住宅(新築) |
中古住宅 |
令和4年~5年 |
5,000万円 |
4,000万円 |
3,000万円 |
令和6年~7年 |
4,500万円 |
3,000万円 |
3,000万円 |
税制改正により、入居のタイミングで借入限度額に違いはあるものの、一般的な住宅と比較すると借入限度額の差は1,000万円もあります。
長期優良住宅の基準を満たすためにはどうしても設備にお金がかかってしまうもの。
目安として、一般的な住宅の建築コストよりも20〜30%ほど高くなりますので、そのことも考慮しての差だといえるでしょう。
ちなみに、新築住宅の場合、住宅ローンの控除期間と控除率は長期優良住宅でも一般的な住宅でも、控除期間は13年、控除率は0.7%です。
中古住宅の場合は同じ0.7%の控除率ですが、控除期間は10年となります。
②最大控除額
入居のタイミング |
長期優良住宅 |
一般的な住宅 |
令和4年~5年 |
455万円 |
364万円 |
令和6年~7年 |
409.5万円 |
273万円 |
控除額は「その年の年末時点でのローン残高×0.7%」で計算され、所得税と住民税から控除されます。
所得税と住民税は年収によっても変わるので、結局いくら税金がお得になるのかは人によってさまざま。
目安として、一般的な住宅購入時の借入限度額である4,000万円以上の借入をした場合、長期優良住宅のほうが住宅ローン控除額の点でメリットを感じやすいでしょう。
また、最大控除額が入居日で変わることにも注目です。
令和5年の年末までに入居であれば、最大455万円の控除額を受けられますが、令和6年の1月入居になるだけで最大控除額は約45万円も下がります。
その他のメリット
住宅ローン控除に関すること以外にも、長期優良住宅には以下の4つのメリットがあります。
- 各種税金控除の優遇
- フラット35の金利の優遇
- 地震保険料の割引
- 補助金
①各種税金控除の優遇
税金名 |
一般住宅 |
長期優良住宅(戸建て) |
長期優良住宅(マンション) |
固定資産税 |
控除額1,200万円 |
控除額1,300万円 |
控除額1,300万円 |
固定資産税 50%減額措置期間 |
・戸建て3年 ・マンション5年 |
5年 |
7年 |
登録免許税 |
所有権保存登記:不動産価格×0.15% 所有権移転登記:不動産価格×0.3% |
所有権保存登記:不動産価格×0.1% 所有権移転登記:不動産価格×0.2% |
所有権保存登記:不動産価格×0.1% 所有権移転登記:不動産価格×0.1% |
固定資産税の控除額は一般住宅よりも長期優良住宅の方が100万円高く、固定資産税が半額となる減額措置期間も長いです。
また、登録免許税も安く抑えられます。
②フラット35の金利の優遇 : 5年または10年間、通常金利よりも-0.25%
通常の金利よりも低くなるので、トータルで支払う住宅ローン費用を抑えられます。
③地震保険料の割引 : 耐震等級2取得で-30%、耐震等級3取得で-50%
耐震等級とは、地震に対しての耐久性を数字であらわしたもので、数字が大きくなるほど地震に強い家となります。
具体的な基準については下記を参考にご覧ください。
耐震等級1 |
震度6強〜7程度の地震でも倒壊しないレベル。 建築基準法で定められている最低限の耐震性。 |
耐震等級2 |
耐震等級1で想定している地震力の1.25倍の地震でも耐えられるレベル。 学校など、避難所に指定される建物と同レベルの耐震性。 |
耐震等級3 |
耐震等級1で想定している地震力の1.5倍の地震でも耐えられるレベル。 災害が起きた際、救護活動などの拠点となる消防署や警察署の建物と同レベルの耐震性。 |
地震保険料は建物がある地域、建物の構造、保険金額により異なり、また2022年10月より地震保険料が改訂されます。
詳しい金額は各保険会社に問い合わせをしましょう。
以下に目安の保険料を記載いたします。
【保険金額1,000万円あたりの保険料】
一番安い地域 (北海道、秋田県、京都府、岡山県、長崎県など) |
7,300円 |
一番高い地域 (千葉県、東京都、神奈川県、静岡県) |
27,500円 |
例えば千葉県で保険金額2,000万円の地震保険をかけると、保険料は55,000円ですが、耐震等級3であれば27,500円に保険料を抑えられます。
④補助金 : 長期優良住宅へのリフォーム代の1/3まで、最大200万円(他条件を満たせば最大250万円)まで補助
※補助金に関しては以下も参考にしてください。
≪参考≫『令和4年度マンガで分かる長期優良住宅化リフォーム推進事業』
長期優良住宅の認定を受けるデメリット
長期優良住宅には住宅ローン控除を始めとしたメリットがありますが、以下の3つのデメリットもあります。
- 申請には費用も時間もかかる
- 工事費用が高くなりやすい
- 定期的な点検が必要
メリットだけなくデメリットも確認し、長期優良住宅の認定を受けるかどうか判断しましょう。
申請には費用も時間もかかる
認定を受けるには、所轄行政庁の審査を受けなくてはいけません。
申請と審査にかかる費用は所轄行政庁によって変わりますが、目安となる金額は5万円前後。
さらに、審査に必要な書類を作成したり、手続きを代行したりするハウスメーカーや工務店に書類作成費用・手数料として20〜30万円支払います。
書類作成費用・手数料はハウスメーカーや工務店によっても変わるので、費用を抑えたい場合は複数の会社に見積もりしてみるとよいでしょう。
また、申請してから実際に認定を受けるまでは時間がかかり、その間工事着工できません。
一般住宅を建てる場合よりも1週間〜1ヶ月、場合によってはそれ以上に遅れる場合もあります。
審査書類の不備など、準備が不十分でも遅れてしまうので、事前準備はしっかりと行いたいところ。
自身で申請することも可能ですが、余計な時間・手間がかかる可能性を考えると、あまり無理をしないほうがよいでしょう。
工事費用が高くなりやすい
住宅の性能と費用は比例します。
長期優良住宅でなくても、断熱性が高く、耐震性にも優れた家は高額になりがちです。
さらに、長期優良住宅の認定を受けるには必須条件を満たさないといけません。
質のいい建築材を使用すれば材料費が高くなりますし、特殊な建築構造のため工期が長くなりやすく人件費も高くなります。
しかし、20年・30年経ったときにかかるメンテナンス費やリフォーム代は一般的な住宅よりも抑えることが可能。
日本では今後大地震が起こるといわれており、大雨による水害被害もここ数年ニュースで多数取り上げられています。
災害に強い住宅は長い目で見れば支出を抑えられるので、トータルで考えることも必要です。
定期的な点検が必要
長期優良住宅に認定される条件の1つに「定期的な点検の実施」があります。
認定を受け、家が完成して終わり!ではなく、その後も定期的に点検をしなければ認定取り消しの可能性があるので注意が必要です。
点検は申請時に提出した「維持保全計画」に沿って行い、最低でも10年に1回はしなくてはいけません。
また、点検だけでなく、修繕などを行った場合でも記録に残してきちんと保存することも求められます。
認定を受けたあとの注意点については下記も参考にご覧ください
長期優良住宅認定を受けるための手続き
手続きは自身で行うことも可能ですが、余計や手間や時間をかけたくない場合、申請のノウハウがあるハウスメーカーや工務店に依頼するほうが無難です。
①事前相談・審査
登録住宅性能評価機関に「長期優良住宅建築等計画」をもって相談に行きます。
認定基準を満たしていない部分があればこの段階で修正可能。事前相談をすることで、審査のやり直しを防げます。
↓
②確認書交付
認定基準を満たせば、登録住宅性能評価機関より確認書が交付されます。
↓
③必要書類の提出
確認書と一緒に、認定申請書・設計内容説明書など必要書類を所轄行政庁に送付します。
↓
④所轄行政庁が審査
登録住宅性能評価機関では「認定基準を満たしている」と判断された場合でも、基準を満たしていないと判断される場合があります。
↓
⑤認定通知書の交付
認定基準を満たしていると判断されれば、所轄行政庁より認定通知書を受領します。
ここまで完了してようやく、家作りの工事が着工できます。
なお、申請の流れや必要書類に関して、詳細な情報は下記でも確認できます。
長期優良住宅の認定手続きをする際の注意点は?
長期優良住宅の認定手続きをする際の注意点は2つ。
認定を受けたいと考えたら、そのあとのスケジュールも考えて行動しましょう。
ハウスメーカー・工務店への相談は早めにする
ハウスメーカー・工務店には、家作りの相談に行くタイミングで相談しましょう。
長期優良住宅は構造や間取り、使用する建築材まで、一般住宅と異なります。
そのため、間取りや設備が決まりだしてから「長期優良住宅にしたい」と相談をすると、間取りも設備も変更せざるを得ない状況になりかねません。
間取りなどの変更が必要になれば、もちろん時間がかかりますし、長期優良住宅の申請の準備や着工日にまで影響します。
また、長期優良住宅を目指すのであれば、どうしても希望通りにできないことも出てくるので、妥協点や代用のプランを考える時間も必要でしょう。
ハウスメーカー・工務店に早めに相談をし、できること・できないこと、そして基準を満たすためには必要なことを確認しながら進めることが大事です。
着工前に申請しなくてはいけない
所轄行政庁では長期優良住宅の申請時に設計書などを確認し、認定に必要な基準を満たしているかどうかを審査します。
認定がでるまでに着工してはいけない理由は、申請前や審査中に着工すると、「所轄行政庁が認定した図面、計画書通り」の工事ができないからです。
たとえ、結果的には不備のない書類を提出していて、かつ、基準を満たす性能を有している家を建てても長期優良住宅として認定されなくなってしまいます。
申請してから認定されるまでにどうしても時間はかかりますが、辛抱強く待ちましょう。
メリットの多い長期優良住宅は早めに相談しよう!
長期優良住宅には住宅ローン控除を始めとした、一般住宅にはないメリットがいくつもありました。
もちろん、デメリットや申請時の注意点もあります。
しかし、安心安全の住宅に長く住めるという点や税金の控除が受けられる点を考えるとそれほど強いデメリットではないかと思います。
住宅ローン控除上限額はタイミングを逃すと引き下がってしまうので、少しでも長期優良住宅が気になった方は早めにハウスメーカー・工務店に相談しましょう。
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