家を建てたり購入する際に「長期優良住宅」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか?長期優良住宅では税制優遇を受けられるなどのメリットがたくさんあります。今回は長期優良住宅でどのような税制優遇がうけられるのか、また、デメリットや認定方法を詳しくご紹介します。
長期優良住宅とは?
長期優良住宅とは、国が制定した長期優良住宅の認定基準をクリアし、長期に渡り良好な状態で使用できると認定を受けた住宅のことです。
長期優良住宅認定制度は、従来のスクラップ&ビルド型の社会から、良い住宅を建てて長く大切に使うストック活用型への社会の転換を目的として2009年に制定されました。
長期優良住宅の認定戸数は年間10万件程度で推移しており、認定を受けると税制優遇措置や補助金の支給などさまざまなメリットを享受できます。
長期優良住宅が受けられる4つの優遇制度
長期優良住宅では一体どのような優遇制度が受けられるのでしょうか。主なものに下記の4つが挙げられます。
- 住宅ローン控除
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 固定資産税
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.住宅ローン控除
住宅ローン控除は、正式には「住宅借入金等特別控除」と言い、住宅ローンを利用して住宅を購入した際、年末時点での住宅ローン残高を基準に減税を受けられる制度のことです。
住宅ローン控除の対象限度額には借入限度額上限が定められており、一般住宅では3,000万円のところ、長期優良住宅では5,000万円まで引き上げられます。
住宅ローン控除率は各年末時点のローン残高の0.7%のため、最大控除額は5,000万円の0.7%の35万円です。
2.不動産取得税
不動産取得税とは不動産を取得した際に課税される税金のことです。不動産取得税率は本来4%ですが、2024年3月31日までに取得した場合には、特例で税率が3%に減税されます。
不動産取得税の算出方法は、不動産の「固定資産評価額」から控除額を引いた後の金額の3%です。
通常の住宅の場合、固定資産税評価額から1,200万円が控除されて不動産取得税を計算するのに対し、長期優良住宅の場合、1,300万円控除となり控除枠が100万円拡大します。
3.登録免許税
住宅を購入するときには、法務局で所有権の登記をします。登録免許税とは、不動産の登記をする際に納める税金のことです。
新築した場合や新築住宅・マンションを購入した際には所有保存登記、中古物件を購入した際には所有権移転登記が必要で、登録免許税は不動産の評価額に税率をかけて算出します。
一般住宅の場合、税率は所有保存登記が0.15%、所有権移転登記が0.3%です。それに対し、長期優良住宅の場合、所有保存登記が0.1%、所有権移転登記が0.2%に優遇されます。
例えば、不動産の評価額が1,000万円の場合、一般住宅では所有保存登記は1万5,000円、所有権移転登記は3万円です。一方、長期優良住宅では所有保存登記は1万円、所有権移転登記は2万円に優遇されます。
4.固定資産税
固定資産税とは、土地や不動産、償却資産などにかかり、毎年1月1日に納める税金のことです。新築で住宅を建てた場合、固定資産税は一定期間、二分の一に減額されます。
一般住宅の場合、減額期間は3年間であるのに対し、長期優良住宅の場合は一戸建てで5年、マンションで7年間、二分の一に減額になる税制優遇を受けることができます。
固定資産税の優遇を受けるには、平成28年3月31日までに建てられた新築物件であることなど、いくつかの条件があるため事前に確認しておきましょう。
長期優良住宅のその他のメリットは?
これまで長期優良住宅で得られる4つの税制優遇をご紹介しました。長期優良住宅では、税制優遇以外にも下記のようなメリットが享受できます。
- フラット35の金利が低くなる
- 地震保険料の割引き対象になる
- 補助金を受けられる場合がある
それぞれどのようなものなのか詳しく見ていきましょう。
その他のメリット①:フラット35の金利が低くなる
長期優良住宅では、長期固定金利型の住宅ローン「フラット35」の金利優遇が受けられるのもメリットの一つです。
長期優良住宅の場合、「フラット35S」の利用が可能で、当初10年間、金利が0.25%引き下げられます。
例えば、借入額3,000万円、金利1.5%、借入期間35年の場合、一般住宅では総返済額はおよそ3,858万円です。一方、長期優良住宅の場合、当初10年は金利が1.25%に引き下げられるので総返済額はおよそ3,785万円と、一般住宅に比べて約70万円安くなります。
その他のメリット②:地震保険料の割引き対象になる
長期優良住宅の認定項目の一つに耐震性が含まれており、耐震等級2級以上の基準が要件となっています。長期優良住宅の認定されている場合、地震保険の耐震等級割引の条件を満たしていることになるので、地震保険料の優遇措置を受けられるのです。
耐震等級による割引き率は、耐震等級2以上で30%、耐震等級3以上で50%となります。
ただし、割引きを受けるには保険会社に所定の書類の提出が必要なので注意しましょう。
その他のメリット③:補助金を受けられる場合がある
「地域型住宅グリーン化事業」は、耐久性や省エネ性能に優れた新築木造住宅に要する工事費用に対して補助金が交付される制度です。
長期優良住宅を新築・購入すると、この制度の「長寿命型」に該当し、国から補助金が交付され、最大110万円を受け取れます。
補助金を受ける条件として、国土交通省からの採択を受けた中小工務店が建てるなどの条件や、建築に地域材を利用すると加算金が出る場合もあるので、地域型住宅グリーン化事業のサイトで確認しておくとよいでしょう。
参照:一般社団法人木を活かす建築推進協議会「地域型住宅グリーン化事業」
長期優良住宅のデメリット
長期優良住宅を建てるとさまざまなメリットがあることがわかりましたが、反対にデメリットも存在します。
長期優良住宅の主なデメリットは以下の2つです。
- 長期優良住宅の着工には時間とコストがかかる
- 申請やメンテナンスに費用や手間がかかる
事前にデメリットを把握した上で、長期優良住宅の建築を検討しましょう。それぞれのデメリットを詳しく解説していきます。
デメリット①:長期優良住宅の着工には時間とコストがかかる
長期優良住宅は一般住宅に比べて性能の高い住宅のため、グレードが高い住宅設備や構造部材が必要になり、そのため建築コストは割高になります。
また、長期優良住宅の認定基準に適合しているかの審査などで時間がかかるため、着工に一般住宅よりも約1週間〜1ヶ月の時間がかかる場合があります。長期優良住宅に慣れている住宅会社であればスムーズに進む傾向にあるので、書類作成や手続きが経験豊富な会社を選ぶと良いでしょう。
デメリット②:申請やメンテナンスに費用や手間がかかる
長期優良住宅制度の申請にかかる費用は、所管行政庁によって異なりますが約5〜6万円です。そして、住宅建設会社や工務店の申請書類作成の手数料を含めると、一般的にトータルで20〜30万円程かかります。
また、長期優良住宅は建てた後にも定期的なメンテナンスが必要です。そして自然災害が起きた後は臨時点検の実施も定められているため一般住宅に比べ維持費がかかります。
メンテナンスを適切に行っていないと判断された場合、認定が取り消されるリスクもあるので注意しましょう。
長期優良住宅の認定を受けるための基準・条件は?
長期優良住宅のメリット・デメリットがわかったところで、長期優良住宅の認定を受けるための基準をご説明します。
なお、長期優良住宅の認定基準は新築か、改築・増築かによって異なります。ここでは新築一戸建ての場合の認定基準をご紹介します。長期優良住宅の認定基準は以下の7項目です。
劣化対策
数世代にわたり住宅の構造躯体(建築物の構造体)が使用できること。
耐震性
極めてまれに発生する地震に対し、継続利用のための回収の容易化を図るため、損傷のレベルの低減を図ること。
維持管理・更新
構造躯体に比べて耐用年数が短い内装・設備について、維持管理を容易に行うために必要な措置が講じられていること。
省エネルギー対策
次世代省エネルギー基準に適合するために必要な断熱性能、断熱等性能等級4を確保していること。
住戸面積
総床面積が75平米以上、少なくとも一つの階の床面積が40平米以上あること。
居住環境への配慮
良好な景観の形成や、地域における居住環境の維持・向上に配慮されたものであること。
維持保全計画
定期的な点検・補修等に関する計画が策定されていること。
参照:国土交通省「長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について」
これらの項目の全てをクリアする必要がありますが、どの性能も長期間高い性能を保つためには重要と言えるでしょう。
税制優遇について理解は深まりましたか?
いかがでしたでしょうか。今回は長期優良住宅が受けられる税制優遇、メリット・デメリット、認定基準についてお伝えしました。
手間やコストがかかっても、長く快適に暮らせて税制・金利の優遇が受けられるなど、長期優良住宅はメリットが多いです。
また、良い家を建て適切なメンテナンスを行うことで、次世代にも住み継げる点も魅力の一つです。
住宅を購入、リフォームする際にはぜひ長期優良住宅を検討してみてはいかがでしょうか。
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