マンション売却を検討しているとき「どんな税金を払うの?」「支払う税金はいくら?」と不安な方も多いのではないでしょうか。マンションという大きな財産を売却するのだから不安になるのも当然です。
今回はマンション売却時にかかる税金のシミュレーションをします。税金の計算方法がわかるので、売却検討中の方はぜひ参考にしてください。
マンションの売却でかかる税金の種類は?
マンションを売却する際にかかる税金は「譲渡所得税」「印紙税」「登録免許税」「消費税」の4つです。ここでは、それぞれの税金について、いつどうやって納税するのか解説していきます。
マンション売却時の税金の金額については後ほど解説しますが、金額をシミュレーションするためにも、まずは税金の概要をおさえておきましょう。
譲渡所得税とは
譲渡所得税とは「所得税」「住民税」「復興特別所得税」の3つの税金の総称です。所得税と住民税はマンションを売却時の利益(譲渡所得)に対して、復興特別所得税は所得税に対して税金がかかります。
復興特別所得税は、2011年の東日本大震災で被害を受けた地域の復興財源を集めるために2013年に新たに課税されることになった税金です。
所得税と復興特別所得税は、売却の翌年の確定申告で納税する方法と、給与天引き(会社員の場合)される方法があります。
住民税の納税方法は、給与天引きか納付書での納税です。納付書の場合、確定申告の翌年6月頃に郵送されるため、届き次第金融機関で払いましょう。
印紙税とは
印紙税は、契約書など、決められた課税文書を作成するために必要な税金です。マンションの売買契約においては、売買契約書に収入印紙を貼ることで納税します。
ただし収入印紙を貼るだけでは印紙税を納付したことにはなりません。収入印紙を貼ったうえに印鑑や署名による消印が必要です。収入印紙を貼っていても消印がなければ、罰則の対象となってしまうため気を付けましょう。
登録免許税とは
登録免許税とは、不動産の登記手続きの際にかかる税金です。マンションの買主は「所有権移転当為」「抵当権設定登記」、売主は「抵当権抹消登記」に登録免許税がかかります。
抵当権とは、住宅ローンをくむときに、銀行がマンションを担保とする権利です。物件売却により住宅ローンを完済するさいは、抵当権を外さなければなりません。
マンションの売却時の登記手続きは、一般的に司法書士に依頼するため、売主や買主は司法書士に費用を払うことで、登録免許税を納めるケースがほとんどです。
消費税とは
マンションの売却においては、仲介業者に支払う仲介手数料及び登記手続きを司法書士に依頼する際の司法書士手数料に消費税がかかります。
また、賃貸経営など事業を行っているマンションを売却する場合は、消費税がかかりますが、居住用のマンションを売却する場合は、その売却価格に消費税はかかりません。
居住用というのは、セカンドハウスとしての利用も含まれますが「毎月1日以上居住の用に供するもの」などの要件を満たす必要があります。
マンションの売却時に何年所有していたかで税率が変わる
所得税・住民税・復興特別所得税の3つが含まれる譲渡所得税は、マンションを売却した年の1月1日時点における所有年数により、以下の通り税率が変わります。
マンションの所有年数 | 5年以下(短期譲渡所得扱い) | 5年超え(長期譲渡所得扱い) |
住民税率(%) | 9% | 5% |
所得税率(%) | 30% | 15% |
復興特別所得税率(%) | 0.63% | 0.315% |
合計(%) | 39.63% | 20.315% |
所有年数5年を境に、倍近く税率が変わります。5年以内の所有で売却を急いでいない場合は、所有期間が5年を超えるまで待つことも視野にいれておくといいでしょう。
マンション売却で発生する税金の税率
前項でも3つの所得税の税率を説明しましたが、以下でマンション売却にかかる税金の税率をまとめましたので、参考にしてください。次項のシミュレーションをする際にもこの表を参考にします。
税金の名称 | 税率(税金) |
譲渡所得税 |
所有期間5年以内:39.63% 所有期間5年超:20.315% |
印紙税 | 売却金額による |
登録免許税 | 1,000円/不動産1個当たり |
消費税 | 10% |
マンションを売却すると税金はいくら?シミュレーションを紹介!
ここでは以下の条件で売却時の税金をシミュレーションします。
- 売却物件:マンション1部屋
- 売却価格:2,000万円
- 売却利益:1,000万円
- 所有年数:8年
- 売却年月日:令和4年2月1日
譲渡所得税はいくら?
まず、譲渡所得税を計算します。
5年を超える所有の場合の譲渡所得税の合計税率は20.315%です。譲渡所得税は、譲渡所得にかかる税金のため、譲渡所得に20.315%を乗じることで計算でき、203万1,500円となります。
⇒譲渡所得税=1,000万円×20.315%=203万1,500円
印紙税はいくら?
印紙税率は売買金額によって以下の表のように定められています。
契約書記載のマンション売買金額(円) | 税率(円) | 平成26年4月1日から令和6年3月31日期間対象の軽減税率 | 平成9年4月1日から平成26年3月31日期間対象の軽減税率 |
10万円超 | 400 | 200 | ‐ |
50万円超 | 1,000 | 500 | ‐ |
100万円超 | 2,000 | 1,000 | ‐ |
500万円超 | 1万 | 5,000 | ‐ |
1,000万円超 | 2万 | 1万 | 1万5,000 |
5,000万円超 | 6万 | 3万 | 4万5,000 |
1億円超 | 10万 | 6万 | 8万 |
5億円超 | 20万 | 16万 | 18万 |
10億円超 | 40万 | 32万 | 36万 |
50億円超 | 60万 | 48万 | 54万 |
今回は売却価格が2,000万円なので、売買契約書に記載される金額も2,000万円です。上記の表の1,000万円超かつ令和4年2月1日の売却のため、印紙税は1万円になります。
登録免許税はいくら?
登録免許税は不動産1個当たり1,000円です。今回売却するのはマンション1部屋のため、登録免許税は1,000円になります。
消費税いくら?
消費税がかかるのは、主に仲介手数料と司法書士手数料です。仲介手数料は以下の計算で求められます。
仲介手数料=売買価格×3%+6万円=66万円
仲介手数料の消費税=66万円×10%=6万6,000円
一方、司法書士手数料の相場は2~5万円です。仮に2万円だとすると司法書士手数料の消費税は2,000円になります。
仲介手数料の消費税6万6,000円と司法書士手数料の消費税2,000円を合計すると、消費税は6万8,000円です。
マンション売却でかかる税金対策に利用できる特例で節税を
ここまで、マンション売却には大きく分けて4つの税金がかかることを説明してきましたが、そのうち譲渡所得税に関しては、条件を満たすと特例により節税できる可能性があります。
ここでは「取得費加算特例」「3,000万円の特別控除の特例」「長期譲渡所得課税特例」とその他の特例として「居住用不動産の譲渡損失の損益通算と繰越控除」について、解説するので参考にしてください。
相続したマンションを譲渡した場合の取得費加算特例
相続したマンションを譲渡した場合、取得費加算という特例が使えます。取得費加算とは、被相続人の死亡から3年10ヵ月以内にマンションを売却した場合、納税済みの相続税の一部を物件の取得費に合算できることで、不動産の譲渡所得の金額を少なくできる特例です。
譲渡所得税は譲渡所得にかかる税金のため、譲渡所得の金額が少なくなると譲渡所得税を抑えられます。
マイホームを売却した場合の3,000万円の特別控除の特例
居住用のマンションの売却のおいて、条件を満たせば譲渡所得から3,000万円控除できます。譲渡所得が3,000万円以下であれば、3,000万円の特別控除を受けると、譲渡所得税がかかりません。
また、3,000万円の特別控除は、相続した空き家に関しても適用されます。ただし被相続人が居住していた家であることが条件のため、建て替えなどが行われていた場合は適用されません。
また、3,000万円の特別控除の特例を受けると、その後、マンションを購入する際に住宅ローン控除は適用されないため注意が必要です。
特定居住物件を売却した場合の長期譲渡所得課税特例
特定居住物件を譲渡した年の1月1日時点で所有期間が10年を超える場合、上記の3,000万円の特別控除だけでなく、特別控除後の利益に定率分離課税されることで、譲渡所得を抑えられます。
定率分離課税とは、3,000万円の特別控除後の利益のうち、6,000万円以下の部分は所得税10%・住民税4%、6,000万円を超える部分には所得税15%・住民税5%と金額によって税率が変わり、低い税率になることです。
なお、特定居住物件とは、相続の開始前までに被相続人や被相続人と生計を共にしていた親族が居住用として利用していた物件をさします。
その他利用できる特例
居住用のマンションを売却しても、必ず利益がでるとはかぎりません。たとえば、購入価格より売却価格が安ければ、損失となってしまいます。
そんな時に使えるのが「居住用不動産の譲渡損失の損益通算と繰越控除」です。損益通算とは、マンションの売却で損失がでた際に、ほかの所得からその損失を補うことで、マンション以外の所得を控除できます。
繰越控除とは、マンション以外の所得から補いきれない場合、翌年以降にその損失を繰越せその年の所得を控除できる特例です。
直接的に、マンション売却にかかる節税ができるわけではありませんが、総合的には節税できます。
マンションの売却で税金がかからない場合がある
マンションの売却において、譲渡所得税はかからない場合があります。先ほども説明した通り、譲渡所得税のうち、所得税と住民税はマンション売却時の利益(譲渡所得)に対してかかる税金です。
つまり、譲渡所得が無ければ、いくら税率をかけても所得税と住民税は0円になります。復興特別所得税は所得税に対してかかる税金のため、所得税が0円であれば復興特別所得税も0円となり、譲渡所得税はかかりません。
また譲渡所得があったとしても、特例により譲渡所得が無くなれば、譲渡所得税は不要です。
マンションを売却したら確定申告を忘れずに
マンション売却により利益が出た場合には必ず確定申告をして譲渡所得税を払わなければなりません。タイミングは売却した翌年の確定申告です。
また、マンション売却により利益ではなく損失がでた場合は、確定申告は必須ではありませんが、確定申告することで「居住用不動産の譲渡損失の損益通算と繰越控除」が使え、過払い分の税金があれば、還付してもらえます。
利益の有無に関係なく、マンションを売却したら確定申告は忘れないようにしましょう。
マンション売却にかかる税金を事前に把握しよう
マンション売却時にかかる税金は、譲渡所得税・印紙税・登録免許税・消費税の4つです。このうち譲渡所得はマンションの所有年数が10年を境に倍近く税率が変わります。
また売却により利益が出なければ譲渡所得税の納税義務はありません。また3,000万円の特別控除の特例を利用すると、譲渡所得をなくせたり減額できたりします。
マンション売却時の税金には所有年数や特例の利用可否が大きく関わってきますので、是非この記事を参考に、上手く節税し売却しましょう。