不動産の売却時に利益が出た場合、譲渡所得税を納める必要があります。
買い替えの際は多額の資金を必要とするので出費を抑えたいですよね。
その税金対策として、買い替え特例や3,000万円控除などが挙げられます。
今回は、買い替え特例に着目して、基礎から解説をします。この記事で買い替え特例を利用して税金対策をしましょう。
買い替え特例とは?
買い替え特例とは、不動産を売却する際に得た利益分の「譲渡所得税を先送りにできる」制度のことです。買い替えた物件を売却するまで先延ばしが可能で、買い替えた物件を売却する際に納めることになります。
この制度を利用することで、税金の支払い分を一時的に新居購入の資金に充てることができるので、買い替えしやすいことが魅力です。
適用条件は?
適応条件は、売却物件の条件と買い替え先の物件の条件に分けられます。それぞれ確認しましょう。
売却物件の条件
- 居住しなくなってから3年以内に売却をすること
- 2年の間、他の特例を利用していないこと
- 売却金額が1億円以内であること
- 売却相手が親族や身内でないこと
- 自分自身が住んでいた家であること
- 日本国内にあること
買い替え先物件の条件
- 建物の床面積は50平米以上、土地は500平米以下であること
- 新耐震基準の物件であること
- 耐火建築物の中古住宅である場合、取得日から25年以内に建築された物件であること
- 日本国内にあること
こちらが買い替え特例の条件になります。
買い替え特例のメリット・デメリット
次に買い替え特例のメリットとデメリットを確認しましょう。
買い替え特例のメリット
メリットは、買い替えに必要な多額の資金を賄えることです。税金分の代金を購入資金などに充てることで、資金面に余裕を持つことができるのが最大のメリットと言えます。
二つ目のメリットは、生涯その物件に住む場合は、税金を支払わなくて良い点です。買い替え特例で税金を先延ばしにした場合、その税金を支払うのは、その物件を売却した時です。つまり生涯住む場合は、税金を支払う必要がなくなります。
買い替え特例のデメリット
デメリットは、次に買い替えをした際の負担が大きくなる点です。再度、買い替え特例の利用はできず、次の買い替えで必ず支払う必要があるので注意しましょう。
次のデメリットは、他の控除と併用ができないことです。3,000万円の特別控除や住宅ローン控除などの利用ができなくなるので、よく比較しどの特例が最も税金対策になるのかを検討する必要があります。
買い替え特例を利用したほうが良いケースは?
買い替え特例を利用する際には、「3,000万円特別控除」との比較が欠かせません。
3,000万円特別控除は、売却利益の3,000万円までは、税金が控除される制度です。つまり譲渡益が3,000万円以内の場合は、3,000万円特別控除の利用をおすすめします。
譲渡益が3,000万円以上になる人は買い替え特例
それでは、買い替え特例を利用したほうが良いケースについてです。譲渡益が3,000万円以上になる場合は、買い替え特例の利用を検討しましょう。「3,000万円の特別控除」では、譲渡益の3,000万円以内の部分しか控除にならないため、3,000万円を超えた部分は納税する必要があります。3,000万円を超えた場合は、買い替え特例を利用した方がメリットになる可能性があります。
上記の条件に加えて、メリットでも触れたように、買い替え先の物件に生涯住む、子供の代まで住み続ける場合は、買い替え特例の利用がよいでしょう。
売却益が3,000万円を超え、その物件に生涯住み続ける場合に利用しましょう。
3,000万控除も視野に入れる
売却益が3,000万円以内である場合は、3,000万円控除を利用しましょう。また、売却益が3,000万円を超える場合でも、数年で売却をする予定の方は、3,000万円を超える分の税金を支払った方がよいでしょう。将来の動きを予想しながら、買い替え特例か3,000控除を利用するかしっかりと検討することをおすすめします。
居住用の買い替え特例は?
居住用の買い替え特例は、マイホームの買い替えの際に利用が可能です。正式名称を居住用財産の買い替え特例といいます。
条件は以下の通りです。
売却物件の条件
- 居住しなくなってから3年以内に売却をすること
- 2年の間、他の特例を利用していないこと
- 売却金額が1億円以内であること
- 売却相手が親族や身内でないこと
- 自分自身が住んでいた家であること
- 日本国内にあること
買い替え先物件の条件
- 建物の床面積は50平米以上、土地は500平米以下であること
- 新耐震基準の物件であること
- 耐火建築物の中古住宅である場合、取得日から25年以内に建築された物件であること
- 日本国内にあること
こちらの条件を確認して適応していれば、利用ができます。
事業用の場合は、条件などが変わるので次章で確認しましょう。
事業用の買い替え特例は?
居住用の場合は全額を先送りにすることができますが、事業用の買い替え特例は売買利益の80%までの課税のみの先送りになります。さらに事業用の買い替え特例の場合、条件が居住用と異なるので確認をしていきましょう。
- 売却物件、買い替え物件ともに事業を目的とした不動産であること
- 譲渡資産と買換資産とが、一定の組合せに当てはまるものであること
- 買い替え先の土地は、売却する土地の5倍以内
- 売却した年の前後1年の間に買い替え先の不動産を取得すること
- 買換資産を取得した日から1年以内に事業に使うこと
- その他の特例を受けていないこと
- 譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超えていること
以上が条件になります。
条件2つ目の「譲渡資産と買換資産とが、一定の組合せに当てはまるものであること」の例をご紹介します。
「売却物件が既成市街地等内にある事業所で所有期間が10年を超える。買い替え物件が既成市街地等以外の一定の地域にある事業用の不動産である」
「売却物件が所有期間が10年を超える国内にある事業用の土地等や建物である。買い替え物件が国内にある建物または300㎡以上の土地である」
このように売却物件と買い替え先の物件で組み合わせが決まっています。
適応されるか詳しく知りたい方は国税庁ホームページまたは、租税特別措置法第37条第1項を確認しましょう。
買い替え特例の利用例は?
買い替え特例の利用例について解説をします。
以下の条件の場合の譲渡所得税を確認しましょう。
- 不動産の購入価格:4,000万円
- その物件の売却価格:7,000万円
- 買い換え先の購入価格:8,000万円
- 取得費:2,800万円
- 譲渡費用:400万円
先ほどの計算式に当てはめると
譲渡所得税=「売買金額-(取得費+譲渡費用)」×税率
譲渡所得=「7,000万円-(2,800万円+400万円)×税率」
所得税は、3,800万円×15%=570万円
住民税は、3,800万円×5%=190万円
このケースでは、合計760万円の支払いが必要になります。
買い替え特例の注意点は?
買い替え特例を利用する際の注意点は確定申告が必要であることです。確定申告は、売却益を得た翌年の2月16日〜3月15日までに行う必要があります。買い替え特例の手続きも確定申告の際に合わせて行うので注意しましょう。
確定申告に必要な書類を確認しましょう。
居住用の場合
- 譲渡所得の明細書
- 売買契約書の写し
- 売却した物件の各種証明書(前章の売却物件の条件を証明できるもの。耐震基準適合証明書など)
- 売却した物件の登記簿謄本または登記事項証明書
- 住民票
事業用の場合
- 譲渡所得の内訳(土地・建物用の確定申告書付表兼計算明細書)
- 買い替え先の登記事項証明書
- 特例が適用可能な地域内あることを示す市町村の証明書
以上の書類が必要になるので、事前に準備をしておきましょう!
確定申告が詳しく分からない方は、確定申告窓口や税理士への相談をおすすめします。
買い替え特例を利用して税金対策を!
ここまで不動産の買い替え特例について解説をしました。
買い替え特例は、不動産を売却する際の譲渡所得税を先送りにできる制度のこと。買い替えた物件を売却するまで先延ばしが可能で、買い替えの資金を賄うことができます。
適応条件については、居住用と事業用で異なるので、それぞれ確認をしましょう。
また、買い替え特例以外によく利用される特例として「3,000万円の特別控除」があります。譲渡益が3,000万円以内である場合は、全額が控除になるので、こちらの制度を利用しましょう。
買い替え特例を利用したほうが良い場合は、譲渡益が3,000万円以上で買い替え先の物件に生涯住む場合です。再度売却をしないかぎり納税をする必要がないため、生涯住み続ける場合は、最大の税対策になるでしょう。
このように買い替え特例を上手に利用して、税金対策を徹底しましょう!
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