マンションを売却して確定申告する際、「減価償却費」を計算する必要があります。ただし、減価償却費の計算は複雑です。
この記事では、マンション売却時の確定申告で必要な減価償却費と譲渡所得税それぞれの計算式、国税庁などの相談先について解説します。減価償却費を正確に計算したい方は、ぜひ最後までお読みください。
減価償却とは?
減価償却は、マンションを売却したときの利益を算出する際に重要な会計上の仕組みです。ここでは、減価償却の概要を解説します。
不動産の経過年数に応じた価値を算出する方法
減価償却とは、マンションなどの不動産の経過年数に応じた価値を算出する方法です。投資用マンションだけではなく、自宅マンションの売却でも用いられています。
不動産は経過年数に応じて古くなり、少しずつ価値が減少していくと考えられています。この減少している価値を金額に換算し、税金や経費を正しく計上するために、減価償却は必要です。
土地ではなく建物部分のみ対象となる
減価償却は、建物部分だけを対象としています。建物部分は、経過年数に応じて劣化すると考えられるためです。税金や経費を計算するために、建物部分のみ減価償却を適用することになります。
ただし、土地は対象外です。土地は、年数が経っても劣化すると考えられていません。マンションの土地部分に関しては、減価償却の対象にならないと覚えておきましょう。
自宅マンション売却では定額法で計算する
自宅のマンションで減価償却を適用する際は、定額法を用います。定率法という計算方法もありますが、マンションを取得したのが平成28年4月1日以降の場合、定額法しか認められていません。
定額法とは、法定耐用年数で減価償却の対象となる金額を均等に割り、毎年定額を償却する計算方法です。
減価償却費を算出する際は「法定耐用年数」を使う
先述した「法定耐用年数」とは、建物部分の構造などの基準によって、価値がなくなるまでの年数を定めているものです。法定耐用年数によって決まる、減少する価値の指標を「償却率」といいます。
また、木造や鉄筋コンクリート造などの材質・構造によって、法定耐用年数も償却率も大きく違います。材質・構造ごとの法定耐用年数と償却率は、後の章で詳しく見ていきましょう。
マンションの取得費を出すために減価償却費を求める
建物部分の減少した価値を金額で表した減価償却費は、マンションを取得した費用を正確に計算するために知っておくべき数字です。マンションの取得費は、物件価格と仲介手数料などの諸費用から、減価償却費を差し引いて算出できます。
取得費を正確に求めなければいけない理由は、売却益である譲渡所得には、所得税と住民税、復興特別所得税がかかるためです。マンションを売却した価額から取得費などを差し引き、利益が出ている場合、確定申告して税金を納めなければいけません。
マンションを売却したときの減価償却費の計算式
減価償却費の計算式は、居住用と事業用で異なります。ここでは、それぞれの計算式をご紹介します。
居住用の計算式
居住用マンションで減価償却費を算出する際は、以下の計算式を用います。
建物の取得費×0.9×償却率×経過年数
建物の構造ごとの償却率は、以下のとおりです。
構造 |
耐用年数 |
償却率 |
木造 |
33年 |
0.031 |
木造モルタル |
30年 |
0.034 |
鉄骨造3mm以下 |
28年 |
0.036 |
鉄骨造3mm超4mm以下 |
40年 |
0.025 |
鉄骨造4mm超 |
51年 |
0.020 |
鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造 |
70年 |
0.015 |
事業用の計算式
事業用マンション(賃貸マンションなど)の減価償却費の計算式は、以下のとおりです。
建物の取得費×償却率×業務に供された月数÷12
建物の構造ごとの償却率も、以下のように居住用マンションとは違います。
構造 |
耐用年数 |
償却率 |
木造 |
22年 |
0.046 |
木造モルタル |
20年 |
0.050 |
鉄骨造3mm以下 |
19年 |
0.053 |
鉄骨造3mm超4mm以下 |
27年 |
0.038 |
鉄骨造4mm超 |
34年 |
0.030 |
鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造 |
47年 |
0.022 |
マンション売却での減価償却費を計算する流れ
減価償却費を計算するときは、以下の流れで進めます。
- 購入代金を確認する
- 取得費を確認する
- 法定耐用年数によって決まる償却率を調べる
- 購入から売却までの年数を確認する
ここでは、居住用マンションを例に、減価償却費を計算する流れをご紹介します。
流れ①:購入代金を確認する
最初に、マンションの購入代金を調べます。売買契約書に建物部分のみの金額が記載されている場合はすぐにわかりますが、土地との合計金額になっている可能性もあります。
建物部分と土地の金額が分かれていないときは、以下の方法で建物部分を計算しましょう。
建物部分の購入代金の調べ方 |
計算式 |
消費税から価格を算出する |
売買契約書に記載されている消費税÷消費税率+消費税 |
標準建築単価を利用する |
建築年の標準建築単価×専有面積 |
固定資産税評価額から計算する |
購入代金×建物評価額÷(建物評価額+土地評価額) |
流れ②:取得費を確認する
続いて、マンションの購入代金以外の取得費をチェックします。取得費に含まれるものは、以下のとおりです。
- 仲介手数料
- 登記費用
- 不動産取得税
- 印紙税
- 固定資産税の精算金
- 住宅ローンの事務手数料・金利・保証料
- 団体信用生命保険料
- リフォーム費用
これらの費用も、建物部分と土地部分を分ける必要があります。割合は「流れ①」で求めた金額を使いましょう。
流れ③:法定耐用年数によって決まる償却率を調べる
建物部分の取得費がわかったら、償却率を調べます。償却率は、「マンションを売却したときの減価償却費の計算式」で解説した数値を使いましょう。
居住用マンションは、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造になっていることが多いため、償却率は0.015を適用することになります。
流れ④:購入から売却までの年数を確認する
居住用マンションの経過年数は、6ヶ月未満の端数は切捨て、6ヶ月以上の端数は1年と計算します。購入したのが平成25年5月で、売却は平成30年10月の場合、所有期間は5年5ヵ月となり、経過年数は5年です。
経過年数までわかれば、あとは「建物の取得費×0.9×償却率×経過年数」の計算式によって、減価償却費を求めることが可能です。
マンション売却時の譲渡所得・譲渡所得税の計算方法
取得費がわかれば、マンション売却時の譲渡所得と譲渡所得税を算出できます。ここでは、譲渡所得と譲渡所得税の計算方法を見ていきましょう。
譲渡所得の計算方法
マンションの売却益である譲渡所得は、以下の計算式で求められます。
譲渡所得=譲渡収入-(取得費+譲渡費用)
譲渡収入は、マンションの売却金額のことです。取得費は、マンションの購入代金などから減価償却費を差し引いた費用です。譲渡費用は、印紙税や仲介手数料などの売却時に発生した費用を意味しています。
この計算式で譲渡所得がプラスになっている場合、確定申告によって譲渡所得税を納める必要があります。
譲渡所得税の計算方法
譲渡所得税は、譲渡所得に定められた税率をかけることで計算可能です。税率は、マンションの所有期間によって異なります。
所有期間 |
税率(所得税+復興特別所得税+住民税) |
所有期間5年以下(短期譲渡所得) |
39.63% |
所有期間5年超え(長期譲渡所得) |
20.315% |
マンションを所有している期間が長いほど税率は低くなるため、節税しやすいです。また、条件をクリアすれば、3,000万円の控除や軽減税率14.21%などの特例を適用させられます。
マンション売却時の減価償却で困ったときの相談先
これまでご紹介してきたように、減価償却や譲渡所得税の計算は複雑です。そこでここでは、マンション売却時の減価償却で困ったときに相談する場所をご紹介します。
相談先①:税務署、税理士
マンション売却時の減価償却や税金は、税務署や税理士に相談することが可能です。税務署のスタッフに問い合わせれば、なにが取得費になるのかや細かい計算方法などを教えてもらえます。
税理士の場合、減価償却や税金について相談できるだけではなく、確定申告をすべて任せることも可能です。費用的に余裕のある方は、税理士に手続きを任せることを検討しましょう。
相談先②:国税庁
税務署や税理士のみならず、国税庁に相談することもできます。国税庁では、税金に関する相談窓口を設けているためです。チャットで相談できるサービスもあるため、土日や夜間でも気軽に質問できます。
電話で相談したい場合は、「国税局電話相談センター」に問い合わせましょう。
相談先③:不動産会社
減価償却や取得費、譲渡所得税などの相談は、不動産会社でも対応可能です。不動産会社によっては税理士事務所と連携し、税務の無料相談サービスをおこなっています。
マンションの売却から確定申告のサポートまで、すべて不動産会社に依頼することも可能です。マンション売却に関するすべての手続きに時間や手間をかけたくない方は、不動産会社に頼りましょう。
マンション売却時の減価償却を理解しよう
減価償却は、マンション売却時の取得費や譲渡所得税を計算する際に重要なものです。減価償却費を計算できれば、正しく確定申告できます。
ただし、税金などの専門知識が必要なことは、実績のある不動産会社に協力を仰ぐことがおすすめです。マンション売却に強みを持っている不動産会社に相談すれば、想定以上にマンションを高く売れる可能性もあるでしょう。
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