固定資産税は、マンションを購入したら毎年納めていかなければならない税金です。
しかし、固定資産税とはどのようなものなのか、金額はどうやって決まっているのかなど実際にはわからないことも多いかもしれません。
本記事では、固定資産税の計算方法や支払い時期だけでなく、築年数別にみる費用相場やタワーマンションの場合についてなど詳しく解説していきます。
マンションの固定資産税の決め方
固定資産税には、一定の算出方法があります。まずはそのルールについて確認していきましょう。
- 「固定資産税」とは?どうやって算出される?
- 「固定資産税評価額」ってなに?
- 固定資産税評価額と固定資産税課税標準額とは?
固定資産税の仕組みを理解しておくと、購入するマンション選びの際にも役立つかもしれません。
固定資産税は「所有する土地と建物にかかる税金」のこと
固定資産税とは、所有する土地と建物にかかる税金のことです。土地や建物は動かない(固定された)資産であるため、その名前であると考えると覚えやすいかもしれません。
固定資産税は固定資産税評価額をもとにして計算され、毎年1月1日時点での所有者が市区町村などの自治体に納めます(東京23区のみ東京都へ納める)。
納入義務があるのは所有者となっているため、貸し出す場合にもそのマンションの所有者が納めるのが決まりです。賃貸契約でマンションを借りている人には、固定資産税の納入義務はありません。
売買などで年度途中に所有者が変わった場合は、売買日から起算して売り手と買い手が日割りで清算するのが一般的です。
固定資産税はどうやって決まる?
固定資産税は実際どのように決まっていくのでしょうか。固定資産税の決まり方や「固定資産税評価額」についても詳しく解説していきます。
固定資産税は「固定資産税評価額」の金額次第
「固定資産税評価額」は、固定資産税の計算のもとになる金額のことです。
固定資産税は、「固定資産税評価額」に税率を掛けて算出されます。つまり、固定資産税評価額が大きければ大きいほど高くなるということです。
また、税率については各自治体で決められることになっています。東京都を含めほとんどの自治体で設定している税率は、1.4%です。もし税率が不明な場合は、各自治体に確認するとよいでしょう。
「固定資産税評価額」とは?
固定資産税評価額とは、各自治体が定めた固定資産(土地・建物)の価値を金額にしたものです。これは、各自治体の「固定資産税評価基準」に基づいて決められます。
また、固定資産税評価額については、土地と建物でそれぞれの考え方が異なるものです。
土地の固定資産税評価額は、自治体によって3年に1回見直しが行われる「固定資産税路線価」や土地の場所・面積や形状によって決められます。また、分譲マンションの場合は、その土地の自分が所有する割合分を負担します。
一方、建物の固定資産税評価額は、新築建物を再び立て直す価格(再建築価格)に経年劣化での価値の減少(経年減点補正率)を掛けて計算するものです。経年減点補正率は経年とともに下がっていくため、建物の固定資産税評価額も下がっていきます。
※街路に沿接する標準的な土地の単位地積(1㎡)当たりの価格を表示したもの
「固定資産税評価額」と「固定資産税課税標準額」の違いは?
「固定資産税評価額」と「固定資産税課税標準額」は異なるものです。「固定資産税課税標準額」とは、固定資産税率をかける対象の金額のことを表します。
土地の固定資産税は、固定資産税評価額から直接の計算はしません。税負担の調正措置を加味した固定資産税課税標準額を課税の対象にします。
固定資産税路線価は見直しのたびに変動します。すると急に税負担が上がってしまうかもしれません。そのため土地の固定資産税評価額には、「固定資産税路線価×70%」という税負担の調整措置が適用されます。
したがって、土地の固定資産税評価額より固定資産税課税標準額のほうが低くなるのが一般的です。一方、建物に関しては、「固定資産税評価額=固定資産税課税標準額」と考えられます。
固定資産税の支払いについて
固定資産税の納入先は、各市区町村などの自治体になります。固定資産税の納入をしないと、延滞金や不動産の差し押さえなどにも発展しかねません。
- 支払い時期
- 支払い方法
この2つについてもよく確認しておくことが大切です。
支払い時期は、通常は年4回(6月・9月・12月・2月)
固定資産税は1月1日時点での土地・建物の所有者に課税され、市区町村により異なりますが、概ね4月~6月頃に登録住所へ納税通知書が届けられます。
この税金については一括でも納入できるほか、年4回(6月・9月・12月・2月が一般的)に分けて納めることが可能です。固定資産税は、一括で納入しても分割でも金額は変わりません。
分割の場合は、納税通知書に記載されている納期限を必ず確認しましょう。期限を過ぎてしまった場合には、自治体から催告書が届き延滞金が発生します。
また、延滞金が発生してしまった場合には、手元にある納付書では納められないかもしれません。その場合は、各自治体に納入方法を問い合わせることが必要です。
もしも固定資産税を納めないと、不動産や預貯金が差し押さえられてしまいます。
支払い方法は銀行やクレジットでも可能
固定資産税の振込用紙は、銀行やコンビニなどでの納入が可能です。また、多くの自治体では、口座振替(自動引き落とし)もできるようになっています。さらに一部の自治体では、クレジットカードや電子マネーでの納入も可能です。
納入を忘れてしまう心配がある場合には、一括で納めるか口座振替にしておけば安心かもしれません。また、振込用紙を紛失してしまった場合は、自治体に問い合わせをすると再発行してもらうことができます。ただし、納税通知書の再発行はできません。
固定資産税の計算方法
固定資産税は、土地と建物を分けて算出します。固定資産税の総額は、土地・建物それぞれの計算から出た金額を合わせたものです。
〈土地〉
土地の場合には固定資産税評価額に「税負担調整措置」と「固定資産税の軽減措置」を加えるため次のような計算式になります。
土地の広さ |
計算式 |
200平米以下の部分 |
固定資産税課税標準額(固定資産税路線価×70%)×税率(1.4%)×軽減措置1/6 |
200平米以上の部分 |
固定資産税課税標準額(固定資産税路線価×70%)×税率(1.4%)×軽減措置1/3 |
〈建物〉
建物の場合は、新築の場合は再び同じ建物を建てるのにかかる費用(再建築価格)が基本です。また、一定の条件を満たした新築物件や、長期優良住宅の場合に限って適用となる軽減措置もあります。
マンション |
計算式 |
||
新築 |
固定資産税課税標準額(固定資産税評価額)×税率(1.4%)×軽減措置1/2 |
||
新築 |
固定資産税課税標準額(固定資産税評価額)×税率(1.4%) |
||
中古 |
固定資産税課税標準額(固定資産税評価額)×税率(1.4%)×経年減点補正率 |
新築と中古だと固定資産税はどれくらい違う?
新築マンションの家屋にかかる固定資産税は、中古に比べると大幅に安く感じるかもしれません。しかし、一定の期間を過ぎると減額されなくなる点に注意が必要です。長期的に見ると、必ずしも安いとは言い切れません。
新築マンションの固定資産税は、築後3~5年は税額計算後の1/2になります。
しかし、以下の一定の要件を満たさなければなりません。
- 3階建以上の耐火構造・準耐火構造住宅は5年
- 一般の住宅(上記以外)は3年間
〈新築住宅の軽減を受ける為の主な要件〉
- 2024年3月31日までに建てられたもの
- 床面積50平米以上、280平米以下(賃貸住宅の場合一戸につき40㎡以上280㎡以下)
- 住居用部分が1/2以上
基準を満たすのであれば、床面積120平米までの評価額を1/2に軽減されます。また、これらの基準を満たし、さらに「長期優良住宅」の認定を受ければ、軽減措置の期間がさらに2年間延長されます。
新築マンションの固定資産税は、中古に比べると大幅に安く感じるかもしれません。しかし、一定の期間を過ぎると減額されなくなる点に注意が必要です。長期的に見ると、必ずしも安いとは言い切れません。
タワーマンションの固定資産税の例外措置について
タワーマンションの分譲価格は、高層階に行くほど高くなり低層階の方が安いのが一般的です。しかし、固定資産税の通常の計算では、分譲価格の差は考慮されていませんでした。
固定資産税は土地や建物の価値を金額にしてるにも関わらず、分譲価格を考慮しないという点については問題視されていたようです。そこで、2017年の税改正により、タワーマンションにも例外措置が設けられるようになりました。
高さ60m以上のタワーマンションの固定資産税では、高層階に行くほど高く、低層階ほど安く補正されることになっています。ただし、2017年4月1日前に売買契約が結ばれたものについては、適用の対象外です。
マンション年数別の固定資産税シミュレーション
東京都で50平米のマンションを購入するとして、固定資産税をシミュレーションしていきます。(これはあくまでもシミュレーションのため、実際とはデータが異なる場合があります)
〈土地〉
国土交通省の調査による令和3年度の東京23区の平均地価は、1平米あたり606,100円。50平米なら30,305,000円です。これを参考にして基準とします(地価の変動は加味しません)。
〈建物〉
国税庁の建築価額表では、1平米あたりの建築価額は約36万円(鉄骨鉄筋コンクリート造)。50平米だと18,000,000円(固定資産税評価額)になり、これを基準とします。また、築6年以上の建物については、経年減点補正率を加味しての計算です。
築年数 |
土地税額 |
建物税額 |
合計 |
新築 |
49,498円 |
126,000円 |
175,498円 |
築6年 |
49,498円 |
210,042円 |
259,540円 |
築15年 |
49,498円 |
156,870円 |
206,368円 |
築25年 |
49,498円 |
100,598円 |
150,096円 |
建物の固定資産税は新築時は減額措置が取られるものの、6年目からは通常に戻るため金額が一気に上がります。また、建物には経年減点補正率が加わるため、年数が上がるにつれて金額は安くなっていくことが確認できるでしょう。
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固定資産税の軽減措置は?
土地にかかる固定資産税には、軽減措置があります。
固定資産税の軽減措置は、土地の広さに応じて一定の課税標準額に軽減されるものです。また、この軽減措置に期限はありません。
土地の広さ |
軽減措置 |
200平米以下の部分 |
固定資産税評価額を1/6の課税標準額に軽減 |
200平米以上の部分 |
固定資産税評価額を1/3の課税標準額に軽減 |
一戸建てとマンションでは固定資産税はどれくらい違う?
一戸建てとマンションでは、土地の固定資産税に大きな差があります。マンションは、所有する土地が少なくなるためです。土地の固定資産税だけを見れば、マンションの方が安いといえるでしょう。
一方、建物については、「減価償却期間」が大きくかかわります。減価償却期間とは、建物の経年劣化に合わせて建物の価値が下がっていく期間のことです。
〈減価償却期間〉
・木造の一戸建て:耐用年数は新築時から22年
・鉄筋コンクリートのマンション:新築時から47年
木造が多い一戸建てに比べると、鉄筋コンクリート造のマンションの価値が下がるのは緩やかです。つまり、マンションの方が固定資産税の高い期間が長いということになります。
土地の軽減制度については、一戸建・マンションともに変わりはありません。
ただし、条件と期間が定められていることから、長期的に見ると固定資産税はマンションの方が高いと言われることが多いです。
固定資産税を抑える方法は?
住宅を所有している限り、固定資産税は毎年納めなければならないものです。残念ながら、固定資産税を大幅に安く抑えることはできません。
しかし、小さな工夫や確認を積み重ねることで、結果的に金額を抑えることは可能です。固定資産税をできるだけ抑える方法をいくつかご紹介します。
①課税額は正しいか確認する
固定資産税評価額は、年数を経るごとに変化します。土地・建物ともに正しい固定資産税評価額から計算されている課税額かどうか確認しましょう。
土地は3年に1回の固定資産税路線価の見直しがあり、固定資産税評価額が変わります。また、建物の場合は、経年劣化も考慮しなければなりません。
軽減措置は、自分で申請しないと適用にならないものもあります。あらかじめ、自治体がどのような制度を取っているかを確認しておくことも重要です。
②物置や駐車場などを増やさない
物置や駐車場が増えると固定資産税は高くなる場合があります。固定資産税は土地と建物に課税されますが、ガレージや物置も建物と認められる場合があるからです。
これは、「不動産登記法」に基づくもので、細かな決まりがあります。どうしても物置や駐車場が必要な場合には、建物として認定されない設置の方法もあるため確認しましょう。
③滞納しないように気をつける
固定資産税の納入が遅れると、自治体から催告書が届き延滞金が発生します。延滞金は最大で14.6%になるため、かなり注意が必要です。
納入を忘れてしまいそうな場合は、一括で納めることや口座振替を利用するなどの方法を取りましょう。小さなことですが、固定資産税が膨らむのを防ぐことができます。また、相続した場合は、振替口座がどのような状態であるか確認することが重要です。
④免税している自治体もある
自治体によっては独自に固定資産税の減免を行っている場合があります。自分の住む自治体の情報をよく確認しましょう。
具体的には、火災や自然災害などで損害を受けた場合や、所有者の年齢や環境などがあげられます。設けられている基準や減免の割合などは、自治体によってさまざまです。
多くの場合、自分で申請しなければ減免の対象にはなりません。納税通知書とともに自治体の情報も確認することをおすすめします。
⑤クレジットカードや電子マネーで支払う
自治体によっては、クレジットカードや電子マネーで固定資産税の納入ができる場合があります。クレジットカードや電子マネーの利用は、ポイントをためられるところがメリットです。ポイント分をキャッシュバックと考えると結果的に固定資産税を抑えることにつながるという考えです。
しかし、決済手数料がかかる場合もあるため注意が必要になります。決済手数料と実際につくポイントのどちらが高くつくかを確認するとよいでしょう。
⑥家屋調査を受ける
固定資産税の固定資産税評価額は、家屋調査で決定されます。自治体職員が家屋調査に来る場合には、立ち会うようにしましょう。家屋調査に来るのを拒否することはできますが、そうすると書類上での判断になります。
家屋調査で必ず固定資産税が抑えられるわけではありません。しかし、実際に立ち会うことによって査定に不利にならないように、情報を伝えることができます。
わからない点なども直接質問できるため、疑問を残さずに済むでしょう。調査によって決定した固定資産税評価額にも納得できるはずです。
マンションの固定資産税を理解しよう!
固定資産税は、住宅を所有したら必ず納入していく税金です。税金や制度の仕組みは、一見かなり難しそうに感じるかもしれません。
しかし、住宅購入後のお金のことを考えると、あらかじめ理解して家計の中に見積もっておくことが大切になります。また、これから購入する住宅を選ぶ場合は、判断材料の1つにもなるかもしれません。自治体の情報もしっかり確認しておくことをおすすめします。
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