新型コロナウイルスやウクライナ情勢が世間を騒がせている中、住宅価格への影響を懸念されている方も多いのではないでしょうか?
住宅価格はちょっとした社会的要因で変化しやすいもの。売りに出すことを検討しているのであれば売り時を見極める目が重要になるでしょう。
本記事では、現在の住宅価格の調べ方から今後の不動産の動向まで、住宅価格の推移に関する情報を詳しく解説します。
住宅価格の推移の調べ方とは?
住宅価格は、ちょっとした社会情勢の変化によって変動しやすいものです。住宅の売買や投資を検討しているなら、タイミングを見極める必要があります。
では、住宅価格の上がり下がりについてはどのようにすればチェックできるのでしょうか。
ここでは、国土交通省が公表している二つの指標から推移の見方をチェックしていきます。
- 不動産価格指数を見る
- 公示地価を見る
不動産価格指数を見る
不動産価格指数とは、年間約30万件の不動産取引情報をもとに不動産価格の推移を指数化したものです。国土交通省から毎月発表されています。
全国・ブロック別・都市圏別などカテゴリ別に発表されるので、お住まいの地域や売買を検討している地域の価格推移を詳細に把握可能。おおまかな住宅価格の動向をチェックしたい場合には、不動産価格指数を確認してみるとよいでしょう。
公示地価を見る
公示地価とは、国土交通省などの公的機関によって発表される「土地の価格」です。
その年の1月1日までの全国の標準的な土地の価格を示すもので、毎年3月に公示される数値です。不動産鑑定や公共事業用地の取得価格算定、相続税・固定資産税評価などさまざまな審査の規準として用いられる重要な数値となっています。
【エリア別】2021年までの不動産価格推移は?
では、実際に2021年の住宅価格の推移についてみていきましょう。
下記の表では、エリアごとの不動産価格指数を示しています。2021年11月と10月、その1年前の2020年11月のデータとなっていますので、推移をチェックしてみましょう。
- 全国の場合
- 南関東圏の場合
- 名古屋圏の場合
- 京阪神圏の場合
全国の場合
2020年11月 |
2021年10月 |
2021年11月 |
|
住宅総合 |
115.3 |
123.4 |
124.0 |
住宅地 |
100.6 |
104.6 |
105.5 |
戸建て |
102.7 |
108.9 |
108.1 |
マンション |
155.5 |
167.0 |
170.6 |
南関東圏の場合
2020年11月 |
2021年10月 |
2021年11月 |
|
住宅総合 |
115.3 |
125.6 |
127.0 |
住宅地 |
101.2 |
106.8 |
109.2 |
戸建て |
100.2 |
108.6 |
108.3 |
マンション |
147.5 |
159.2 |
162.9 |
名古屋圏の場合
2020年11月 |
2021年10月 |
2021年11月 |
|
住宅総合 |
102.6 |
105.4 |
106.2 |
住宅地 |
89.2 |
91.4 |
88.1 |
戸建て |
98.5 |
101.0 |
103.2 |
マンション |
167.3 |
173.9 |
173.8 |
京阪神圏の場合
2020年11月 |
2021年10月 |
2021年11月 |
|
住宅総合 |
118.7 |
124.3 |
124.9 |
住宅地 |
104.5 |
103.2 |
106.1 |
戸建て |
105.5 |
109.9 |
107.8 |
マンション |
161.6 |
172.3 |
175.9 |
2012年から10年間の推移
下記のデータは全国エリアの2012年11月から2021年11月の約10年間の推移を示しています。10年かけて全体的に数値が上昇していることがわかりますね。
特にマンションの価格推移は著しく、公示地価の上昇や2013年の金融緩和政策を受けて右肩上がりで伸び続けています。
2012年11月 |
2021年11月 |
|
住宅総合 |
99.5 |
124.0 |
住宅地 |
96.8 |
105.5 |
戸建て |
98.7 |
108.1 |
マンション |
102.7 |
170.6 |
地価が上がっている地域もある
上記のデータをみていただくと、2020年と比較して地価が上昇している地域が見受けられますよね。特に2012年から現在に至るまでの推移は著しく、10年かけて少しずつ住宅価格は上昇してきました。
しかし、住宅価格はここ10年間ノンストップで上昇を続けてきたわけではありません。下落と上昇を繰り返しながら伸び続けてきたのです。その背景には、社会問題の影響があります。一見住宅価格とは関係なさそうな問題が、価格の推移に多大な影響を与えるかもしれないのです。
ここからは、現代の不動産業を取り巻く社会問題についてふれていきます。
不動産の2022年問題とは?
「不動産の2022年問題」の影響により、都市部の住宅価格の下落が懸念されています。
詳しく説明しますと、都市部の農地や緑地を保護するために、1992年の生産緑地法改訂にともない「生産緑地」が施行されました。生産緑地に指定された土地の宅地化は禁じられ、営農の義務が課されますが、一方で税金が優遇されるメリットがあります。
しかし、生産緑地の指定は30年で解除されるものです。そのため、1992年から30年経過した2022年には、生産緑地指定が解除された土地が大量に発生します。
生産緑地指定が解除されれば、当然その土地に対する税金の優遇も終了。土地の所有者が宅地として売りに出すことが考えられます。土地の数がどんどん増えて需要を上回ると、競争率が下がり、やがて土地の価格も下落し、住宅価格の推移に影響をもたらすでしょう。これが「不動産の2022年問題」です。
2022年問題の対策とは?
2022年を迎えた今、スルーできない問題となっている2022年問題。
生産緑地指定が解除された土地が大量に市場に出回れば、不動産市場に大きな影響を与えることとなります。生産緑地の所有者だけではなく、住宅地の所有者にも密接にかかわってくる問題となり得るでしょう。
では、どのように対策すればよいのでしょうか。ここでは4つの方法について解説します。
- 市民農園等整備事業の拡充
- 10年ごとに更新できる特定生産緑地の指定
- 建築規制の緩和
- 都市農地賃借法
市民農園等整備事業の拡充
「市民農園等整備事業」とは、緑豊かな市街地を形成し、まちの魅力・居住環境の向上を図るため、生産緑地等を買い取り、市民農園として都市公園を整備する事業のことです。
市民農園は都市部の住民が気軽に農業に触れる場所としてニーズが高まっています。事業を拡大することで、生産緑地を有効活用でき、宅地として不動産市場に流出することを防げるでしょう。
参照:都市計画:コンパクトシティの形成に関連する支援施策集 - 国土交通省
10年ごとに更新できる特定生産緑地の指定
2018年、生産緑地法が新たに改正され、「特定生産緑地制度」がスタートしました。
特定生産緑地制度は、既に生産緑地に指定されている土地を、指定後30年経過する前に「特定生産緑地」と制定することで、税制の優遇を10年延長できる制度です。
また、特定生産緑地は10年ごとの延長が可能。今後も農業で土地を使っていきたい方や、農地として貸し出したい方におすすめの対策です。
建築規制の緩和
建築規制を緩和して、生産緑地を新たな方向性で活用するのも有効な対策です。
これまでは、生産緑地内では畜舎、蚕室、温室などの農業用施設のみ建築が許可されていました。しかし、2022年を前に徐々に建築規制が緩和され、今では直売所や農作物を用いたレストランなどの建築が許可されるようになりました。営農以外の方法での土地活用の可能性が広がっています。
都市農地賃借法
特定生産緑地制度がスタートした2018年、同時に「都市農地賃借法」が制定されました。
どのような法かといいますと、「生産緑地の所有者が第三者に土地を貸しやすくするための法律」です。
生産緑地の貸し出しに際して、法定更新の適用外であること、相続税納税猶予制度の適用は継続することなどの条件が付与され、生産緑地を効率的に活用できます。
住宅価格推移に影響を与えた?
2022年問題を筆頭に、社会現象は住宅価格の推移と密接に結びついています。
では、直近で世間を騒がせた社会現象は、住宅価格に影響を与えていたのでしょうか。下記の二つの現象について解説します。
- 新型コロナウイルス
- 東京オリンピック
新型コロナウイルスの影響
2020年初頭から世間を騒がせ始めた新型コロナウイルス。
インバウンドの減少や人流制限によって、観光スポットなどの商業地を中心に地価の下落がみられました。一方で住宅価格への影響はというと、実はほぼほぼ横ばいなのです。
リモートワークなどの新しい働き方に対応するため、マンションの需要は増加傾向に。それにともない、住宅価格も高騰を続けています。
東京オリンピックの影響
コロナウイルスの影響により、2020年開催予定が2021年に後ろ倒しでの開催となった東京オリンピック。開催後の経済は低迷するとささやかれていましたが、こちらも住宅価格の推移にはほぼ影響なし。
一度目の緊急事態宣言時に一時的な下落をみせたものの、すぐに持ち直し、マンション・戸建てともに堅実な成長を続けています。
今後の住宅価格推移に影響を与える社会的要因
2020年〜2021年に世間を騒がせたコロナウイルスとオリンピックですが、実際のところはそれほど住宅価格の推移に影響をもたらしていないことがわかりました。
とはいえ、先述のように住宅価格の推移と社会問題は密接な関係にあります。今後発生する事象が影響をもたらす可能性は十分に考えられるでしょう。
今後住宅価格に影響を与えうる3つの社会的要因について解説します。
- 生産緑地問題
- 大阪万博
- ウクライナ危機
生産緑地問題について
2022年問題の項でもふれたように、生産緑地指定が解除された土地が不動産市場にあふれかえり、住宅価格の推移に影響を与えることが危惧されています。
対策としては、先述のように特定生産緑地制度の活用や、農地を求めている人に貸し出すなどの方法が挙げられるでしょう。また、市民農園の拡充や建築規制の緩和など、政府も力を入れて対策に取り組んでいます。いろいろな方法を検討してみましょう。
大阪万博について
2025年に開催が決定している大阪万博。多くの観光客を誘致するため、大阪市内においてはインフラ整備が進んでいくことが予測されます。公共交通機関の拡充にともない、生活利便性が向上することで、大阪の住宅価格推移に影響を与える可能性が高いでしょう。
大阪都市部のマンション価格は、万博の開催に関係なく上昇傾向にあります。今後はより広範囲にわたって住宅価格が推移するかもしれません。
ウクライナ危機について
2022年3月現在、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続いています。
コロナウイルスの最中でも上昇を続ける住宅価格。その影響を受け、建築に必須である木材の価格が高騰しています。通称「ウッドショック」です。
ロシアは世界の森林面積の1/5を占める森林大国。日本も輸入木材の14%はロシア産です。目下の軍事侵攻を受け、物流が混乱をきわめています。このままですと、想定の予算で住宅建設できなくなる可能性があり、結果的に住宅価格の推移に影響を与えるかもしれません。
2023年以降の不動産価格はどうなる?
2023年の住宅価格に関しては、今と比べて激しく推移する可能性は現状低い見通しです。
新型コロナウイルスの影響など懸念材料はあるものの、現状の住宅価格は上昇傾向。これは、ステイホームやリモートワークの推進など新しい生活様式の呼びかけによって人々の住まいへの関心が高まり、より住みよい住宅を求めたことが要因といえるでしょう。この傾向は2023年以降も継続するものとみられています。
一方で、2025年には団塊の世代が後期高齢者となり、少子高齢化の深刻化が予測されています。人口減少が進行すると、自治体や公共施設の統廃合につながり、利便性の低い土地が発生するでしょう。そうすると、住宅価格の低迷につながりかねません。住宅を売りに出すことを考えているのであれば、このような問題を念頭に入れて売り時を見極めましょう。
では、本年2022年は「売り時」なのでしょうか。詳しく解説します。
2022年住宅は売り時?
結論からいいますと、2022年は住宅を売りに出すのに適しているといえるでしょう。
先述のように、コロナ禍でも住宅価格は上昇傾向にあります。新しい生活様式の導入から人々の住まいへの高い関心はしばらく継続することが見込まれることから、売りに出すにはよい時期といえるでしょう。
2025年にはまた別の問題が予測されているので、売買を検討している方は売り時を逃さないよう、住宅価格の推移に目を光らせておきましょう。 >>プロフィールはこちら
売却時は住宅価格推移を調べましょう
今回は、住宅価格の推移の調べ方や今後の動向について解説しました。
現在、住宅価格は右肩上がりに推移しています。しかしながら、ウクライナ情勢や2025年問題など懸念される問題は多々あります。住宅価格はちょっとしたことでも変動しやすいもの。売りに出すことを検討している方は、この記事を参考に推移をチェックして売り時を見極めましょう。
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